今回と次回のコラムは海外での不動産融資づけにおける私自身の失敗談になります(良い子は真似しないように…知らなくて痛い目にあうのは私ひとりで十分)。
日本では、アパートローン等をひく際に、オーナー自身が金融機関の窓口に出向き、融資担当に会って審査してもらうことが一般的に行われていますが、
英米圏諸国では、「ローンコンサルタント」や「ローンアドバイザー」といった、オーナーと金融機関の間に立って活動するプロフェッショナルを通すことが多く、物件オーナーが金融機関と直接やりとりすることは一般的ではありません。特に、オーナーが融資の審査基準や提出書類の記入方法を十分知らずに、金融機関に直接コンタクトすると良い結果を生まないばかりか、次の融資にマイナスの影響が出るリスクも高まります。
生兵法は怪我のもと。私が直接銀行にコンタクトして痛い目を見たのは2回。いずれもオーストラリアでの体験になります。
1) 支店で否決されると全行で審査ストップになる
オーストラリアには、日本ほど多様な銀行、信金信組の類が存在しません。「ビッグ4」と呼ばれる大手四行がシェアの9割を握る、極めて寡占が進んだ金融マーケットなので、その四行のいずれかで融資審査の結果否決されると、結構ダメージでかい話になります。
日本でも、どこかの支店で融資が否決になると、他の支店にもその情報が共有されるため、結局他の銀行を回らなければいけなくなりますが、オーストラリアでもその点は全く同じです。金融機関の選択肢が少ない分、融資否決のダメージは感覚的に日本より深刻。
私たちは通常、オーストラリアに住所がない外国人として融資チャレンジするわけですから、同国内で住所と収入を持つ人々に比べて、審査上明らかに不利になります。しかも、現地の政府が融資を引き締める際、真っ先にターゲットにされるのが、非居住の外国人に対するローンです。
例えば昨年4月、オーストラリアで非居住外国人に対する融資が、時の政権の方針で非常に厳しくなりました。当時、ビッグ4で融資審査中の外国人で、通常なら審査にラクラク通るようなケースでさえ、いきなり「ゼロ回答」が続出したのです。
私の犯した痛恨のミスは、オーストラリア現地の金融機関がそんな「外国人お断り」の雰囲気だった時に、自分から現地銀行の担当者にコンタクトしてしまったことです。もっとも、私の属性や条件は決して悪くありませんでした。
・オーストラリアに住んでいないけど永住権は持っている。
・前年の8月に、すでに融資内諾(3か月有効)を取っていた。
しかし、いくら永住権保持者であっても、かつて融資内諾を取っていても、オーストラリアに居住してない者に対する融資承認は「ご法度」の雰囲気が漂っていた同銀行からは、にべもなく「お断り」のメールが来ました。一度NGが出てしまった以上、同行から、もはや融資はひけません。
後で学んだことですが、これ、もし現地の銀行融資に詳しいローンコンサルタントを通していれば、「ものは言いよう」で、回避できた可能性があったようです。
2) 国外で借金のある物件は申告しないほうが良い
日本でもオーストラリアでも、融資申請用紙には自身の保有する預貯金、有価証券や保有不動産を記入する欄があります。
ここに、(審査する銀行からみて)海外の物件を記入すべきか否か、迷うところですが、一般的なアドバイスをすると、
・借金がなければ書いた方がよい。
・まだ残債があるなら書かない方がよい。
というのも、2013年、まだ海外での融資経験が浅かった頃、私はオーストラリアの銀行に対して、「残債のある日本の物件」を正直に申告してしまい、それで痛い目にあったからです。
私が保有する日本国内の物件は、パフォーマンスとしては、そう悪くないものです。
・表面利回り 8.3~9.1%
・返済金利 1.2~2.3%
・返済比率 46~58%
しかし、これをオーストラリアの銀行(ビッグ4)に出した結果、「債務超過だからNG」という、訳わからないことを言われました。後で分かったことですが、
オーストラリア某銀行では、どの国の物件でも、返済金利を一律5%と計算していた!
私、そんな「スルガ金利」以上のローンをひいた覚えはありません。1~2%台の金利で借りてるからこそキャッシュフローがちゃんと回っているわけで、それを一生懸命銀行に説明しましたが、向こうは聞く耳持ちませんでした。当時オーストラリアの返済金利は4~5%で、1%台で借りられる日本の融資環境は理解し難いようです。
この案件に関しては、米系の豪州支店から融資をひいて、なんとか事なきを得ました。ここで学んだ教訓は、「外国に収益物件があっても債務があると、銀行審査に明らかにマイナスになるので、その事実を融資担当者に極力知らさない方が良い」ということです。
だって、「カネ1%台で借りてるのに、5%で借りてることにされちゃう」変な計算で判断されたら、たまったもんじゃないですもんね。