鈴木 学の不動産投資コラム

シリーズ連載: 海外物件の管理

LIFULL HOME'S 不動産投資コラム

第九回「快速償却&節税物件に要注意」

2016年頃から、「節税メリットの出る海外不動産販売」がブームになっています。主戦場は「米国」の「築22年以上経過した木造住宅」。

なぜ米国? なぜ中古木造なのでしょうか? 一言でいうと「日本での節税効果が最大になるから」で、課税所得の高い富裕層を中心によく売れています。

日本で確定申告する際、不動産所得は建物の法定耐用年数と築年数をもとに算定した償却期間で減価償却できます。築22年以上の木造住宅なら、日本の税法上、最短4年で減価償却が可能です。

国土の広大な米国では大都市部を除いて地価が割安、つまり相対的に建物の価値が高くなります。築22年以上経過した木造物件でも、総額に占める価値比率は、テキサス州などの地方都市の場合、建物80%、土地20%程度。そういう物件を買えば物件価格の80%を4年で償却できるため、節税効果が高くなります。

たとえば、土地と建物を含めた価格が5000万円とすると4000万円が建物代に相当し、この4000万円を4年間で割ると毎年1000万円のx減価償却という税務上の損金が発生します。もし課税所得1000万円の人が買えば、計算上は購入後4年間は所得税、住民税ともゼロになります。

ただし、節税利益を先食いする分、後々のキャッシュフローが厳しくなります。5年目以降は建物価値がゼロになるので節税はできず、所得税と住民税がしっかりかかりますし、さらに、この物件を売却する際は、償却した分も込みで譲渡所得税がかかります(購入後5年以内の売却だと39.63%、それ以上だと20.315%)。

このように、国税庁は結局「数年間ラクさせて後でがっつり取る」わけですが、それでも向こう数年間の利益を消して節税したいニーズは強く、実際たくさん売れていますし、「節税特需」を当て込んだ日系不動産業者の米国進出も、テキサス州を中心に盛んです。但し、節税動機で海外不動産を購入する場合、次のようなリスクがあるのでご注意ください。

(1)値下がりリスク
不動産なので、値上がりすることもあれば、値下がりもあります。場合によっては、値下がりで節税分が全て吹っ飛んでしまうかもしれません。特に、業者が利益をたっぷり乗せた相場より割高な物件を買ってしまうと、言うまでもなく売却時に値下がりのリスクは大きくなります。

(2)修繕費が嵩むリスク
築古の木造なので、建物のコンディションも玉石混交。ちゃんとメンテナンスしてきた物件と、そうでない物件が混在しています。後者を買った場合、予想以上に修繕費が嵩むリスクがあります。

(3)相続リスク
保有者の年齢や保有期間によっては、相続をどうするか考えなければなりません。日本の個人所得税を節税する目的で米国物件を買う場合、当然、個人名で購入することになりますが、米国における相続手続きは日本と異なり、原則として検認裁判所と呼ばれる裁判所によるプロベート(Probate=検認)手続きを経なければなりません。その手続きに一般的には1年から3年程度の期間を要し、相当な費用負担が生じる上、その期間中は相続財産の処分ができません。それを避ける方法はいくつかありますが、日本の節税を目的に個人名で買う場合、法人等に比べて取れる方策が限定されてしまうので注意が必要です。

海外不動産投資は単なる節税にとどまらず、海の向こうに実物(土地建物)を保有することによる権益およびリスクをオーナーが背負うことを忘れてはなりません。節税ありきよりも、物件そのものの収益性やリスクを第一義に考えるべきだと思います。

【このコラムの著者】

鈴木 学

アジア太平洋大家の会 会長
1968年千葉県生まれ。一橋大学社会学部卒業。
卒業後、ITエンジニア・マネジャーとして、日本、豪州、中国、米国、インドの5ヶ国で勤務経験あり。海外在住経験は8年間。 2002年、豪州シドニーで不動産を買い賃貸に出し、日本から遠隔管理して自信をつけたことを皮切りに、現在では、日本、オーストラリア、米国、タイ、英国、ドイツに、計21室を所有・経営するグローバル大家。

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