「投資家の自己責任vs業者の説明責任」
投資は自己責任、という言葉があります。私も基本的に異議ありませんが、投資不動産の世界では、自己責任なる言葉を悪用・濫用する業者が後を絶たず、社会問題になっています。要は、「客が損するような物件を売って、文句言われると自己責任だと言って逃げる」業者が少なくない。
不動産の売買取引は往々にして、仲介業者と顧客の間に、大きな知識レベルの差(情報の非対称性)があります。それは当然のことで、多くの顧客にとって、不動産は一生に1度か2度の買い物なのに対して、仲介業者は日々、不動産取引を行っているわけですから、経験値は雲泥の差。その格差を和らげるべく、宅建業法で主任士による重要事項説明を義務付けたり、誇大広告を禁止したりしているわけですが、
そうした表面的なコンプライアンスが守られたところで、投資不動産の売買においては、想定賃料やレントロールを操作して利回りを大きく見せたり、家賃保証をつけたり、二重売買契約やエビデンス偽造までやってフルローンをつける等、合法・非合法を含む数々の販売テクニックがあります。客観的にみてベストとはほど遠い物件を、リテラシーの足りない客向けに売ることは、実は赤子の手をひねる位、簡単だったりします。
海外不動産販売においては、日本国内と違って宅建業法のしばりさえない上に、情報の非対称性がさらに大きくなるので事態は深刻だと思います。
業者にうまく丸めこまれて、クソ物件(もとい収益力の弱くてリスクの高い物件)を買ってしまった方の末路は大変。特に、自己資金が僅かしかないのにフルローンで買ってしまった人は、毎月のキャッシュフロー赤字に加え固定資産税が払えず自己破産寸前みたいな悲惨な話も聞きます。それが近年、テレビ東京「ガイアの夜明け」などで批判され、世間の知るところとなりつつあります。
本来、不動産の販売は、重い責任が伴うはずです。特に、買った人の一生を左右してしまいかねない高額な投資不動産の販売に関しては、金融商品や保険の販売でいうところの「自己責任」とは違った、業者の「説明責任」が求められてくると思います。
それは、表面的な重要事項の説明だけにとどまりません。
買い手の保有耐性(空室、修繕費・税負担など、保有時に想定される典型的なリスクに、買い手が財務的・精神的に耐えられるか?)を見極め、それを十分備えない人には物件を売らない勇気を持つ
要は、「物件買うべきじゃない人に売らない」スタンスが、これから不動産業者の資質として求められてくると思います。これこそが、業界に対する信頼回復の鍵でしょう。
営業担当をノルマでガチガチに縛り、組織的なパワハラまでやって追い込み、その結果、無理な販売をしてしまう会社は、淘汰されてしかるべきです。また消費者の側も、そういう会社からの購入を避け、物件購入後も長年、良きパートナーとして共に歩んでくれる会社を選ぶ知恵をつけていくべきだと思います。
今回で、「海外物件の管理」シリーズ連載は終了します。ご愛読ありがとうございました。次回からは連載「ヨーロッパ不動産事情」をお楽しみください。