「海外不動産投資」の面白いところは、世界中の不動産を買ったり、売ったり、貸したりできることです。
人が暮らし、一定以上の経済が営まれているところには、必ず「住宅」や「店舗」があり、それは多くの場合、お金で取引されます。家やお店を買うのも借りるのも、大抵は有償。つまり、我々日本の投資家にとって、「海外不動産投資」のネタは、世界中に転がっているわけです。日本から遠いアフリカとか、中南米、南太平洋に浮かぶ島でさえも、海外不動産投資はもちろん可能です。
が、現時点では、日本から身近な「東南アジア新興国」と、「英米圏先進国」に、人気が集中しているのが実情です。「いきなりアフリカ不動産」とは、なかなかいかないわけで・・・
今回のコラムでは、ポピュラーな「東南アジア」の不動産投資環境を概観してみたいと思います。
1)経済発展度合い、所得水準は国によって、差が大きい
ASEANとは、東南アジア十カ国からなる、地域協力機構ですね。その構成国間で2015年末を目処に、関税、投資、人の流れを自由化する「経済統合」が予定されています。
EUと違って、ASEANの特徴は、経済的に先発グループと後発グループの、所得格差が極めて大きいこと。たとえば、2013年シンガポールの一人当たり名目GDPは、ミャンマーの57倍に及びます。(※EUでは、加盟国中、所得水準最高の「ルクセンブルグ」と最低の「ブルガリア」との格差は、せいぜい6~7倍。)
国名 | 一人あたり名目GDP(ドル) | 実質経済成長率(%) | 国連の定義 |
---|---|---|---|
シンガポール | 52,051 | 3.54 | 先進国 |
マレーシア | 10,428 | 4.70 | 新興(工業)国 |
タイ | 5,878 | 3.11 | |
インドネシア | 3,498 | 5.30 | |
フィリピン | 2,792 | 6.81 | |
ベトナム | 1,895 | 5.30 | |
カンボジア | 1,015 | 7.02 | 後発発展途上国 (あと1~2年で新興国に) |
ミャンマー | 914 | 6.82 |
2)どの国も経済は右肩上がり
所得格差の大きいなかで、ASEAN域内のどの国も、少なくとも現時点では、経済は右肩あがりになっています。先発グループのシンガポール、マレーシア、タイも、後発のミャンマーやカンボジアも、その中間に位置するインドネシア、フィリピン、ベトナムも、どこも、ここ数十年一貫して、経済規模を伸ばしてきています。
ASEAN経済統合、うまくいけば、後発の「カンボジア、ラオス、ミャンマー」、いわゆる「新興メコン諸国」の経済活動や所得の水準を引き上げる作用があるかと思います。この3ヶ国は、現在、国連の定義では「後発発展途上国」に分類されていますが、あと1~2年で、「新興国」グループに入ると期待されています。
3) 不動産投資関連の法制度も、国によって違う
どの国も経済伸びているから、不動産投資で儲けられそうじゃん、と思う方もいることでしょう。確かに、一般的にはその通りなんですが、
実際に、日本人がこれらの国で不動産投資しようとすると、各国の「不動産投資関連の規制」が、前に立ちはだかることになります。それを一覧表にまとめました。
国名 | 外国人名義で土地保有 | 外国人名義で住居保有 | 外国人最低購入金額規制 | 日本人バイヤーの動き |
---|---|---|---|---|
シンガポール | × | ○ | なし | 物件価格が東京以上に高いので、富裕層の実需買いが中心。 |
マレーシア | ○ | ○ | 約3000万円 以上 | 人気あり。 ただ、3000万円台規制のため、 富裕層中心のマーケットになりつつある。 |
タイ | × | ○ | なし | バンコクを中心に、人気あり。 |
インドネシア | × | × | なし | 外国人が所有権が得られないのがネック。 ただバリ島は人気あり。 |
フィリピン | × | ○ | なし | マニラ、セブを中心に、人気あり。 最近はマレーシアを買う投資家が フィリピンに流れる傾向もある。 |
ベトナム | × | △ | なし | 外国人の不動産所有権の規制が厳しい |
カンボジア | × | ○ | なし | 「マレーシア、タイ、フィリピンに続く」不動産投資先として、人気が出てきつつある。 |
ミャンマー | × | × | なし | 外国人が所有権が得られないのがネック。 |
たとえば、ミャンマーやインドネシアは、企業進出は大いに盛り上がっていますが、日本人の不動産投資先として、大きな盛り上がりは見られません。これらの国では、外国人の個人名義での不動産所有が、現時点ではできない。要は、現地人の名前を借りるか、現地人資本を入れた法人で買わなきゃならない、という問題があるからです。
一方で、先発グループのシンガポール、マレーシア、タイあたりになると、外国人名義で住居保有は可能です。ですが、シンガポールの不動産価格は東京以上に高騰しているため、不動産投資というよりは富裕層の実需買いが中心。
その点、「外国人名義で不動産所有できて、かつ、お値段も手頃」な国に、投資家の人気が集まっています。
4) 「三強、プラス1」の時代
現時点で、日本人の不動産投資先として人気の高い国は、
「三強」:マレーシア、タイ、フィリピン
「プラス1」:カンボジア
といえるかと思います。
「三強」のなかでは、経済発展の水準と、不動産の相場が、ざっくり言うと、
マレーシア>タイ>フィリピン
の順になっており、特にマレーシアの不動産マーケットは、「外国人は100万リンギット(3000万円)以上の不動産しか所有できない」規制によって、次第に富裕層向けのマーケットになりつつあるように思います。