鈴木 学の不動産投資コラム

シリーズ連載: ヨーロッパの不動産事情

LIFULL HOME'S 不動産投資コラム

中欧ポーランド、チェコ、ハンガリーの現況と不動産事情

もと共産圏で「東欧」のカテゴリーだったポーランド、チェコ、ハンガリー、スロバキア等の国々、今は「中欧」(Central Europe)と呼ばれています。

ハプスブルク家やポーランド王国が中世~近世の文化を担ってきた、地理的、文化的にもヨーロッパ中心部に位置する国々。共産主義の枠組が外れたいま、「中欧」を名乗るのは、ある意味先祖返りともいえます。

「中欧」の国々は、1991年にソ連崩壊で独立を果たした後、こぞって「西側」陣営への加入を目指し、いずれも2004年までにNATOおよびEU加盟を果たしました。なお通貨に関してはユーロ採用に慎重な国が多く、例えばポーランドがズロチ、チェコがコルナ、ハンガリーがフォリントを国内で流通させています。

共産主義で経済が出遅れた後、いずれの国も「西側の先進国」(ドイツ、イギリス等)レベルを目指し、経済発展の努力を続けてきました。現時点では道半ばと言えます。一番先行しているチェコ(一人あたりGDP22,000ドル台)でもドイツの約半分の所得水準、ポーランドやハンガリー(同16,000ドル台)だとドイツの30~40%の水準なので、外国へ出稼ぎに行く人も少なくありません。

国の総人口は、ポーランドが飛びぬけて多く(3800万人)、チェコとハンガリーはいずれも1000万人前後。但し首都はどこも似たようなサイズで、ワルシャワ(ポーランド)とブダペスト(ハンガリー)が180万人、プラハ(チェコ)が130万人前後で、地下鉄2~3路線を擁する大都市です。

なお、先進国へキャッチアップの途上ゆえ、ここ数年の経済成長率は比較的高く(年率3~4%台)、失業率も大いに改善(2~3%)。好景気が続くためどこも国内不動産市場が活況で、価格も上昇傾向です。

なお、いずれの国も不動産権利体系は土地・建物の完全所有権が外国人にも認められる西欧先進国型です。

ポーランド・ワルシャワ

2019年3月、初めてワルシャワを訪問しました。第一印象は、「地形が平らで全く傾斜が無いこと」、「ヨーロッパの街としては例外的なほど新築の住宅やオフィスをたくさん建てている」ことです。

ワルシャワの街は戦災で多くが破壊され、共産主義時代に無個性な集合住宅がたくさん建ちました。旧市街地近辺こそ昔の状態に復元され観光地となっていますが、市内の他地域では過去と決別して次に進みたい気持ちの表れなのか、古くなった工場や集合住宅を取り壊して中高層の新築を建てる槌音が響き渡っていました。そのためか、地下鉄もオフィスも都市景観も極めて新しく近代的。

特に、ワルシャワの都心部からやや西に行ったRondo
Daszyńskiego駅周辺は、まるで東南アジアかと思うほどの新築建設ラッシュ。このスピード感は、近所の国で所得水準の似通うチェコやハンガリー、バルト三国の首都と比べても大きく際立ちます。

オフィス建ち並ぶワルシャワ都心部で、新築~築浅の住宅面積単価は、㎡あたり€4000前後。坪単価でいうと約165万円。賃貸利回りはグロス4~5%。分かりやすくいえば、2LDKで80㎡くらいの都心コンドミニアムを買えば4000万円前後、賃貸に出せば月15~16万円くらいで、西欧等外国のビジネスマンが借りるイメージです。都心部にも旧共産主義時代の古いアパートが多数残りますが、そういう物件は売買単価が新築の7掛けになるイメージ。なお一般のポーランド人勤労者は住居コストの安い郊外に住みます。

全体として新築建設が目立つワルシャワですが、さすがヨーロッパ文化の国だけあって、古いアパートメントをレノベーションした物件も多数で出回っています。私がみたのは、戦中期に反ナチスドイツのレジスタンスで住民がバリケードを貼った現場に建つ1948年築のアパートメント、外観はそのままで内装をモダンでスタイリッシュにして売りに出されていました。

チェコ・プラハ

チェコは旧共産圏の経済優等生。工業立国に一定の成功をおさめ、英独仏とはまだ差があるとはいえ「ギリギリ先進国水準」は達成した感があります。チェコの通貨コルナの対ユーロ為替はここ10年近く安定的に推移、リーマンショックの影響も比較的軽微で早く回復、その経済力と安定感は旧共産圏随一。首都プラハの都心部は瀟洒なオフィスビルやホテルが並び、郊外はロードサイドの量販店…
見た目はドイツなど先進国と余り変わりません。また、プラハ自身が、歴史と街並みを活かした中欧きっての大観光地です。

経済好調で失業率も低いチェコ。国民の所得水準向上と、近隣諸国(ドイツ、オーストリア、スイス、ロシア等)から投資マネーの流入もあって、2014年頃から、年率15~20%の値上がりが続いています。

そのため、プラハ都心(1区と2区)の不動産価格は高騰し、6000ユーロ/㎡(坪単価@250万円)前後になりました。市内の平均的な住宅地でも上記の半額(3000ユーロ/㎡)前後になっており、賃貸利回りも3~4%と、現地の収入水準と比べた割安感はほぼなくなりました。とはいえ、好調な経済を背景に、まだまだ値上がりそうです。

私が訪れた2018年6月に、プラハ2区、地下鉄IP Pavlova駅の徒歩2分という好立地で出た築古住宅のレノベ分譲物件は、1ベッドルーム29㎡が174,000€(単価€6000/㎡、売約2150万円)で売り出されましたが、瞬時に売り切れました。

ハンガリー・ブダペスト

人口規模はチェコと似た1000万人弱のハンガリー、経済的にはやや見劣りします。同国の通貨フォリントはチェコ(コルナ)やポーランド(ズロチ)と比べると弱く、対ユーロの為替はここ10年じりじりと下がっています。先進国一歩手前で足踏みしている、
農業国の色彩を残した工業国といった印象ですが、低賃金と質の高い労働力を活かした「欧州の自動車工場」という面もあります。

人口180万の首都ブダペストは多様な産業が発達し、美しい街並みや独特の温泉・グルメ文化を活かした大観光地でもあります。国中に温泉が湧いており、ドクターの報酬も割安なため医療リゾートとして競争力があります。

ハンガリーの生活物価は安く、チェコの3割引きといった印象。首都ブダペストは中欧のLCCハブでもあるので航空券も安く、欧州全土から若者が観光や短期滞在にやってきて賑わいます。ナイトライフの充実ぶりは中東欧随一。

他の欧州諸国と同様、ハンガリーの都市部の住まいは中古集合住宅が主流。新築供給力が低く慢性的な住宅不足で、賃料や不動産価値は上がりやすい状況です。

ブダペストは、ドナウ河を挟んで西側の「ブダ」と東側の「ペスト」からなるツインシティ。住宅価格は都心部(5区や7区)で€5000/㎡(坪単価@210万円)に達しますが、一般的な市内立地は€2000~2500/㎡とまだ安く、賃貸利回り5%前後が出ます。

2018年6月の訪問時、都心部隣接8区のCorvin駅至近の築1年アパートメントが1ベッド30㎡で€10万(1250万円)、賃貸利回り5~5.5%で売り出され、すぐ完売しました。ブダペストは、近隣諸国に比べてまだ不動産に割安感が残る都市といえます。

【このコラムの著者】

鈴木 学

アジア太平洋大家の会 会長
1968年千葉県生まれ。一橋大学社会学部卒業。
卒業後、ITエンジニア・マネジャーとして、日本、豪州、中国、米国、インドの5ヶ国で勤務経験あり。海外在住経験は8年間。 2002年、豪州シドニーで不動産を買い賃貸に出し、日本から遠隔管理して自信をつけたことを皮切りに、現在では、日本、オーストラリア、米国、タイ、英国、ドイツに、計21室を所有・経営するグローバル大家。

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