私たちアジア太平洋大家の会が主催した海外不動産セミナーは、開催150回を超えています。私はセミナー主催者として、海外不動産業者のプレゼン資料には必ず目を通し、必要に応じて「コメントや添削」してきました。
これまでの経験からいうと、大多数の業者プレゼン資料は、下記のような構成になっていました。
【典型的な海外不動産セミナー】
問題提起:人口・経済が伸びない日本で資産形成して良いのか?
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立論1:○○国の優位性(強い成長力、人口ボーナス…)
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立論2:○○国不動産で資産形成(値上がり期待、賃料UP期待…)
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立論3:おすすめ物件の紹介
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結論:さあ買いましょう!
この種のセミナーを聞いてて、思うこと。
・「海外資産を持とう」という趣旨はいいけど、いろんな資産形成手段があるなかで、なぜ不動産を選ぶんだろう?
・ある国の経済成長の果実をとりたいなら、ETFとかインデックスファンドを紹介すればいいのでは?
・実物不動産だと個別性が強すぎて、同じ国・都市・エリアでも勝つ物件と負ける物件が出てしまう。経済成長の果実をとるという論旨と投資の実態が乖離しすぎてないか?
私自身を含めて、日本国内で経験のある不動産投資家・賃貸経営者なら、次のことを身に染みて感じているはずです。
・東京都心でさえも、カスな物件は結構ある。
・どんなに衰退した地方都市でも、探せばお宝物件は大抵ある。
・同じエリアの同じ物件でも、シェアハウスにしたり、AirBnBを使ったりと、経営努力次第で収益は大きく上げられる。
・同じエリアの同じ物件でも、タイミングをうまくつかめば安く買えたり、高く売れたりする。
繰り返しますが、不動産は個別性が極めて強く、しかも相対取引で値が決まりますから一物一価ではありません。国の成長力や人口云々以前に「物件自体の競争力」、「賃貸経営力」、「売買のタイミング」等が大きく収益に影響してきます。
今後の人口動態や成長性だけから、「東京の物件は良くて地方の物件はリスキー」とは言えないのが不動産の世界。エリア考察や物件個別の見極めの方がずっと大事です。
上記の視点から、日本で賃貸経営する「大家さん」にとって有益な海外不動産セミナーとは何か、考えてみました。
【大家さん向け、海外不動産セミナー】
問題提起:人口・経済が伸びない日本で資産形成して良いのか?
↓
立論1:○○国の優位性(強い成長力、人口ボーナス…)
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立論2:○○国△△市の不動産市場環境
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立論3:○○国△△市で、勝てる物件、負ける物件とは?
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立論4:弊社おすすめ物件が△△市のマーケットで勝てる理由
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立論5:考えうるリスクおよび軽減策
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結論:弊社物件は投資メリットが大きく、リスクもコントロールされているのでおすすめです。
以上まとめると、
私は、海外に物件を持つだけでなく、大家視点で確実に収益を上げていきたいと思うので、どちらかといえば前述「大家さん不動産セミナー」のフォーマットで語る業者を信頼します。セミナー受講にあたっては、「不動産市況」、「物件ごとの競争力」、「取引に関するリスク」に着目しながら話を聞くと効果が上がると思います。