鈴木 学の不動産投資コラム

シリーズ連載: かしこい海外不動産投資

LIFULL HOME'S 不動産投資コラム

中華圏の常識、日本の非常識

最近の円安に伴い、近隣アジア諸国、特に中華圏の投資家が日本の不動産を投資目的で購入するケースが増えています。台湾、香港、中国本土の主要都市では、日本や米国、オセアニア、東南アジア等をテーマとする不動産セミナーが毎週のように開催され、対外投資熱の高まりを感じます。特に東京では、最近、中華圏からの引き合い・商談が増えたと感じる不動産業者も多いのではないでしょうか?

私は数年前から中華圏投資家に日本不動産を仲介するビジネスを営んでおり、彼らと日常的な接触があります。この仕事は、日本と中華圏の「不動産投資に関する常識の違い」を踏まえたうえで、彼らの期待値に合った魅力的な提案をするわけですが、

距離の近い隣国同士であるにも関わらず、彼我の「常識の違い」は、驚くべきものです。

中華圏の不動産マーケットでは、「キャピタルゲイン(値上がり益)狙い」以外の投資機会がほとんど存在しない。

日本の不動産マーケットでは、一部を除いて「インカムゲイン(賃貸収益)狙い」以外の投資機会がほぼ存在しない。

私は台湾や香港への出張が多く、中国語ができるので現地の不動産雑誌をたくさん読みます。日本と比べて投資意欲が概して高く、国民の多くが株式または不動産投資を当たり前に行う土地柄。都市部の不動産は投機的な資金の流入も多く、香港や台北では東京以上に不動産価格が高騰。その割には賃料水準が低く、グロス賃貸利回りは1%台~2%台が多い。

こんな市況になると、人々が部屋を賃貸に出して家賃を稼ごうなんて発想はなくなります。賃貸に出す意味があるとすれば、「ローンの金利負担をいくらか軽減できる」位。日本の大家さんみたいに「収益不動産買って、家賃収入で生活する」ことは、今日の中華圏マーケットでは夢のまた夢。

その代わり、タイミングによっては「不動産価格が数年で倍になる」みたいな、派手なキャピタルゲインが期待できる側面があるので、皆さん、そちらの方に目が向くわけです。香港、台湾なら中古不動産市場が成熟しており、「転売⇒利益確定」のモデルはやりやすい。現時点では不動産価格が高止まりして、中古物件も高値で取引されるので、築年数が経っても値下がりしにくい市況です。

【台湾の不動産雑誌・・・投資意欲は高い】

【台湾の不動産雑誌・・・投資意欲は高い】

【台湾各都市に林立する高層住宅・・・値上がり期待で買う人が多い】

【台湾各都市に林立する高層住宅・・・値上がり期待で買う人が多い】

そんな彼らが、海の向こうの日本不動産に何を求めるのかというと、インカムゲイン。つまり、安定した家賃収入です。本国のような派手な値上がりが今の日本で期待できないことは、彼らとて分かっています。海外不動産に着目するような人たちだから、概して、投資リテラシーは高い。

しかしながら、「キャピタルゲイン狙いオンリー」なマーケットで育った彼らが、その真逆の「インカムゲイン狙いオンリー」な日本不動産の思考にすぐ馴染むのは難しい。

「日本だとインカムゲインが主流なのは分かってるけどさあ、でもキャピタルゲインがゼロとかマイナスじゃあ、投資する意味ないよね」、それが彼らの本音。

だからこそ、日本では東京都内に中華圏投資家の人気が集中するわけです。東京ならオリンピックもあり、大規模な公共投資も期待される。今のタイミングで買ってオリンピック前に売れば値下がりリスクは低いと、彼らはみているわけです。しかも、保有期間中に、本国では考えられない、グロス5%とかの家賃収入が入ることも魅力のひとつ。

【巷にあふれる日本情報。東京に対する台湾人の関心は非常に高い】

【巷にあふれる日本情報。東京に対する台湾人の関心は非常に高い】

でも、日本で長年、不動産賃貸経営してきた私からみると、「東京都内のグロス5%とかの利回りは低すぎて、魅力ない」と感じてしまう。

自分が千葉県出身ということもあり、「都内を一歩出て、千葉や埼玉の収益物件を買えば、利回りは3%くらい上がるのに・・・」と思うわけですが、でも多くの中華圏投資家にとって、千葉埼玉の物件に手を出すのはまだまだ敷居が高い。

「東京23区以外の不動産情報が非常に乏しい」のに加え、
「東京以外の”地方”では人口が減る、値下がりリスクがある」と思い込んでいるフシもあります。

「そりゃあ、一般論としてはその通りだけど、千葉県でも船橋とか柏とかは都会だし人口も増えてるし、実質、都内とそう変わらない」と、お客様に何度か説明したことがありますが、一般論として「東京」の名がついていない不動産が彼らの検討対象になるには、まだまだ時間がかかりそうです。

不動産投資に関しては、180度違う、日中間の常識・・・どちらのロジックも理解した上で、上手に橋渡ししていくことが中華圏の方々と付き合う上で大事になります。

【このコラムの著者】

鈴木 学

アジア太平洋大家の会 会長
1968年千葉県生まれ。一橋大学社会学部卒業。
卒業後、ITエンジニア・マネジャーとして、日本、豪州、中国、米国、インドの5ヶ国で勤務経験あり。海外在住経験は8年間。 2002年、豪州シドニーで不動産を買い賃貸に出し、日本から遠隔管理して自信をつけたことを皮切りに、現在では、日本、オーストラリア、米国、タイ、英国、ドイツに、計21室を所有・経営するグローバル大家。

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