投資を含め、何事をするにしても「失敗」はしたくないですね。
しかし、人生と一緒で、投資が最初から最後まで順風満帆なことなどあり得ません。
「失敗は成功の基」と言います。
実際に大きな成功を収めている人は、致命傷にならない程度のたくさんの失敗をし、その経験を糧にしています。
アパート、マンション、その他どんな物件に投資するにしても、失敗から得た経験が不動産投資の成功に結び付くと言えるのではないでしょうか。
そこでこのコラムでは、不動産投資にまつわるよくある失敗から致命的な失敗まで、さまざまな「事例」をご紹介します。そして、それらの失敗をどのように克服すれば良いのか、見ていきたいと思います。
なぜ、不動産投資で失敗してしまうのか
そもそも、失敗とは何でしょう?
不動産投資での失敗と言えば、損失が生じることや、想定通りに収益を得られないことでしょう。
その原因を分析すると
1.「情報」の不足
2.「知識」の不足
3.「計画(行動)」の不足
この3つの“不足”が挙げられます。
そのどれか1つ、場合によっては複数が、必ず失敗事例に関係しています。
それでは、代表的な失敗事例を基に、不動産投資で失敗しにくい状況にするための対処法を見てみましょう。
不動産投資の失敗事例と対処方法
(不動産投資で失敗しにくい状況にするには)
失敗事例① 購入価格が高すぎるケース
【40歳代女性】
老後対策セミナーの話がわかりやすく、不動産投資の優位性を認識しました。ちょっと背伸びしているかなと思いましたが、とても親切で信頼できそうな不動産会社だったので、新築のワンルームマンションへの投資を開始。
しかし投資を始めた後、同じマンションの同等の部屋がさらに安く販売されていることがわかったのです。クレームを挙げましたが、取り合ってもらえませんでした。そんなものなのでしょうか?
【回答】
大変残念ですが、そういうものです。
複数の物件を販売する場合、タイミングや交渉の諸条件によって値引きされたり、価格が変わったりすることがあります。
ご自身の投資可能な金額をあらかじめ算定し、商談に臨むべきだったかもしれません。実際に安くなっている物件があったのなら、不動産会社にとって納得できる交渉条件の場合、値引きされた可能性もあったかと思います。
このような後悔をしないためには、先ほど申し上げた失敗の原因である「知識不足」「情報不足」「計画不足」の3つを事前に解消しておきましょう。
例えば不動産の「知識」があれば、土地の価格は「公示価格」や「路線価」などから、建物の価格は「坪単価」「平米単価」からおよその価格が算定できます。
周辺物件の売買価格などの「情報」があれば、投資物件が割高なのか相場並みなのかの判断が可能です。そして投資「計画」があれば、その価格で黒字になるのか、利回りはいくらなのかがわかります。
これからいくつかの失敗事例をご紹介していきますが、原則として高すぎる物件を購入してしまうと、途中でリカバーすることは難しくなります。
不動産投資は「最初が肝心」だと認識しましょう。
失敗事例② 資産価格(不動産価格)が低下
【60歳代元会社員男性】
15年ほど前に節税対策として不動産投資を勧められ、投資用マンションを1戸購入しました。
当初は順調だったので、強い勧誘もあり、3年でトータル5戸に投資。しかしその後リーマンショックが起こり、短期間で物件価格が下落しました。
リーマンショック後すぐは賃料に変化がなく、大きな問題はなかったのですが、しばらくして入居者の入れ替わりが続くようになり、賃料が下落。2年後には、返済に支障をきたすようになりました。
専門家に相談した結果、借入は残ってしまうものの、赤字となった4物件を手放しました。
結局、現在所有してるのは順調だった最初の1物件のみです。その利益も、手放した4物件に残っている借入れの返済に充てている状況です。
【回答】
不動産の場合、短期間で相場が大きく変動することはめったにありませんが、タイミングが悪かったですね。こちらは「計画不足」が原因の失敗事例ですね。
実際、どのようなメカニズムで賃料が下がったのか、確認してみましょう。
1.不動産の資産価格が下落
2.それによって、より低価格で物件を購入した新規参入者が増加
3.以前より安い賃料で賃貸募集が可能に
4.その影響で賃料相場が下落
5.契約更新時に賃料を引き下げざるを得ない状況に
このようなメカニズムがあったわけです。
不動産の投資期間は長期にわたるため、景気サイクルが一巡するタイミングでこのような変化が起こりえます。
不動産投資の利益は投資価格に大きく影響を受けるため、購入価格は慎重に判断しましょう。
資産価格が急激に下がったとしても、売却しないで済むのであれば損失にはなりません。大きな経済環境の変化が発生しても耐えられるように、予備資金を積み立てるなどの計画をしておきましょう。
失敗事例③ 空室の発生で賃料収入ゼロ
【40歳代男性・会社員】
数年前に、比較的利便性の良いエリアに中古賃貸マンションを購入し、不動産投資をしています。
先月初めて退去があり、慌てました。
急な転勤で、3月中旬という時期。しかも退去が3月31日だったため、業者の手配が難しく、思った以上に原状回復に時間が掛かってしまいました。完全に募集するタイミングを逃した形です。
今回は、やむなく家賃を下げることで何とか早期の入居にこぎ着けましたが、次回以降のために何か手立てはあるでしょうか?
【回答】
退去は年度末が多く、最近は引越難民も社会問題化しつつあります。
また、入居者の退去は一定期間毎に起こりうるものなので、空室リスクは避けられません。悩ましい問題です。
その場合、大家(投資家)としては入居者の退去情報をできるだけ早くつかむことが大事です。
通常、退去申請は1ヶ月以上前に入居者から行うことが契約に定められています。
しかし、できれば更新時期の半年ほど前から退去の意向を確認し、退去日時を出来るだけ早く把握するように努めましょう。そうすることによって、早期の原状回復作業・募集が可能となり、空室期間を少なくすることができます。
こうした「情報」や「知識」を持っておくことは、不動産投資の失敗を防ぐ上で大切です。
失敗事例④ 周辺賃料の低下による賃料減少
(更新時に周辺物件の賃料が下がっている場合)
【60歳代男性】
老後の収入が年金だけでは心許ないので、10年ほど前に相続で譲り受けた土地で賃貸アパート経営を始めました。
ところが、数年前の相続税改正を機に、私の複数の友人も近所で賃貸経営を開始。
最近、明らかに家賃相場が下がっており、当初の予定に狂いが生じてきそうです。
どうしたら良いでしょうか?
【回答】
2015年の相続税改正によって、基礎控除が引き下げられました。相続税の対象となる課税価格を下げて節税するために、不動産投資・賃貸アパート経営を始められた方も多いと思います。
ここで大切なのは、周辺賃料が下落している場合でも、空室を恐れるあまり、儲けを減らしてしまう安易な値下げに走らないことです。
居住空間(広さ)や間取りを基準に周辺の競合相手を調査し、立地や日当たり、設備等を冷静に比較した上で、自分の物件のどのような点が優れているのかを認識しましょう。その優れた点を強みとしてアピールできれば、賃料水準を保持できる可能性があります。
そのためにも資金的な余裕を持って、中長期的な視点に立ち、改修など資産価値の保全に努めましょう。
賃貸アパート経営の場合は、他の部屋の契約更新への影響も考慮する必要があります。ネット社会ですから、入居者も情報を取りやすい環境です。1部屋の賃料を下げると、他の部屋の賃料も下げざるを得ないということが起こりえますから注意しましょう。
失敗事例⑤ 滞納の長期化
【70歳代女性】
数年前に入居した独身男性(30歳代)がいます。最初の1年間は良かったのですが、徐々に賃料の支払いが遅れ気味になり、ここ数ヶ月は滞納が生じてきました。事情を聞くと、景気が悪く残業代が減ってしまったとのこと。
しかしすでに滞納額が3ヶ月分になり、問題があると感じています。
どうしたら良いでしょうか?
【回答】
通常、滞納対応は管理を依頼している不動産会社経由で行いますが、最終的には投資家=大家として毅然と対応することが必要になります。
滞納には、迅速な対応が大切です。
滞納金回収のための担保である敷金の範囲内、もしくは連帯保証人が無理なく対応できる金額でないと問題が深刻化するからです。
例えば、最初の滞納が発生した際に、借家人や連帯保証人に電話連絡と督促状にて督促し、2回目の滞納で内容証明郵便(配達証明付)を送付。3回目の滞納が発生した際には、弁護士や認定司法書士など法律家に相談し、法的措置に移行するなど事前に決めておくと良いでしょう。
その他、保証人の代わりとなってくれる保証会社と契約することで、物件の家賃保証サービスを利用することができます。また、賃貸建物を一括して借り受けてもらい、入居者の手続きや家賃回収を任せることができるサブリースなどの制度もあります。収益性は落ちますが、こうした滞納予防対策を打っておくのも良いでしょう。
不動産投資の失敗を防ぐ大切な「知識」の1つです。
失敗事例⑥ 金利上昇でローン返済額増加
【20歳代男性】
数ヶ月前に不動産投資の勉強会に参加し、今後賃貸マンションへの投資をしたいと思っています。
勉強会の中で「借入金利が上がると支払費用が増えてしまうので注意しましょう」という話がありました。
今まで大きな借入をしたことがなく、金利はそんなに簡単に上がるものではないという認識を持っているので、今ひとつイメージが沸きません。
【回答】
本件は失敗事例ではありませんが、理解不足のまま投資をすると失敗に繋がりますので、紹介させて頂きました。
近年の日本では、金利上昇局面を経験したことがないため、忘れ去られている問題です。
特に1990年代のバブル崩壊以後の経済状況しか知らない平成生まれの方には、預金金利が5%以上あった時代をイメージできないでしょう。
しかし、景気対策として政策的に引き下げられていた金利は、景気が上向けば、健全な経済環境に戻すために適正と思われる水準まで引き上げられます。
ここ数年のアメリカでの金利引き上げがその良い例です。日本の場合、日本銀行があと数年は現在の水準を継続すると宣言していますが、その後は金利を引き上げるシナリオになっています。
金利だけを見ると、現在は極めて不動産投資に有利な環境にあると言えます。しかし、今後金利が上昇することを織り込んで投資するようにしましょう。
金利は極力長期で固定する、もしくは固定化が厳しい場合は自己資本を厚くするなど、金利上昇に備えることが必要です。
失敗事例⑦ 修繕費の上昇(経年劣化)
【30歳代男性】
半年ほど前、大きな値引きをしてくれたということもあり、中古賃貸マンション(築13年)を購入し、不動産投資を始めました。
ラッキーと思ったのも束の間、よく認識していなかったのですが、来年大規模修繕があるらしく、このまま行くと値引き以上の大きな持出しになりそうです。
修繕費がこんなにかかるなんて…何とかなりませんか?
【回答】
大変残念ですが、何ともなりません。
これは「情報」「知識」「計画」全てが不足していたことによる失敗事例ですね。
投資用マンションの場合、共有部分については修繕計画があるので、確認が必要です。
修繕費を控えめに見積もっているケースもあり、大規模修繕時に追加で一時金を支払うことがあります。
それを見越して、大規模修繕の前に中古物件として売りに出されることがあるのです。
本件もそのケースだったと思われます。
購入時に修繕計画をしっかりヒアリングし、積立て不足が見込まれる場合は、販売額から不足相当額が差し引かれた価格になっているかを確認しましょう。
賃貸アパートの場合やマンションの専有部分については、自分自身で計画的に賃料から修繕費を引き当てておくことが大切です。
工事費や人件費の増加により、予定より修繕費がアップする事も考えられます。
余裕をもって計画を立てておきましょう。
失敗事例⑧ 管理してくれる不動産会社の対応
【30歳代女性】
不動産投資を始めて2年目です。数ヶ月前に、初めて退去が発生しました。
不動産市況などはよくわからないので、管理をお願いしている不動産会社のアドバイス通りにしていれば、すぐに入居者が決まるだろうと思っていました。しかし、なかなか入居が決まりません。
問い合わせに対する返事が遅く、状況説明もないので、対応に不満を感じるようになりました。
どうしたら良いでしょうか?
【回答】
不動産投資のサポートをしてくれる不動産会社・管理会社の存在、その善し悪しは投資に大きく影響します。
不動産会社・管理会社もビジネスですから、儲けが多い業務、やりやすい業務を優先するのは当たり前です。自分の投資物件をしっかり取り扱って貰えるよう、日頃からコミュニケーションを取るようにしましょう。
不動産会社との失敗例として、以下の3つがよくみられます。
「なかなか入居が決まらない」などの募集段階、
「入居者からのクレーム対応がよくない」などの管理段階、
「退去時の原状回復によるトラブルが長引いている」などの退去段階です。
問合せをしても対応が悪かったり、納得がいかなかったりした場合は、思い切って管理会社を変えることも検討しましょう。国土交通省に賃貸住宅管理業者登録制度がありますので、参考にしてください。
国土交通省:賃貸住宅管理業者登録制度
http://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/tintai/
失敗事例⑨ 思った以上に手元に残らない…
【40歳代男性(会社員)】
仲の良い同僚と、同時期に同じ条件で不動産投資(投資マンション)を始めました。
ただ、同僚と話していると不思議に思うことがあります。私の納税額の方が多いようなのです。
何かの間違いではないでしょうか?
【回答】
不動産投資に関する所得税は総合課税という形式を取っていて、給与など他の所得と合計した金額から所得控除を差し引いて超過累進税率を適用します。
つまり、給与など他の所得が高いと、不動産投資の儲けである不動産所得にもより高い税率がかけられることになるのです。
そのため不動産所得が同じでも、人によって納税額は異なり、手取り額も変わります。
同僚の方は、配偶者・大学生・高校生のお子さんがいらっしゃるため、税金が少ないという背景があるようです。
投資は、手取り金額を基準に考えることが大切です。
自分自身の税額計算ができるように、所得税の仕組みなど不動産投資に必要な基本を学ぶとことで「知識不足」による失敗を防ぐことができます。
失敗事例⑩ 利回りが間違っているのでは?
【20歳代女性】
女性向けの不動産投資セミナーに参加し、この低金利下にも関わらず「利回り4%」という話を聞き、とてもワクワクしてしまいました。
不動産会社の方がしっかりサポートしてくれるということだったので、リスクも少ないと思い、マンション投資をスタート。
当初は安心していたのですが、実際手元には4%も入ってきていません。
私が買った投資用マンションの利回りは本当に4%なのでしょうか?
儲かるのでしょうか?とても不安です。
【回答】
こちらは「情報不足」「知識不足」による失敗事例の1つです。
詳しくは別のコラムで解説しますが、不動産投資に関する利回りといってもたくさんの種類があります。
一般的に不動産投資の広告などで表示されている利回りは「表面利回り」と言われ、経費支出が加味されていません。投資した額≒物件購入価格に対して、どれくらいの賃料収入があるかの割合を示しているに過ぎないのです。
実際にかかる経費を加味した「純利回り」は、「表面利回り」より下がることになります。
所得税、住民税、必要経費である租税公課、管理費、保険料等がどのぐらいかかるのか、しっかり情報収集しておきましょう。
「利回り」は、自分のお金がどれくらい効率的に働いてくれているかを知るためのモノサシです。
投資に失敗しないために、しっかり理解しておきましょう
失敗事例⑪ 「節税効果がある」という言葉に騙された?
【30歳代男性(会社員)】
「不動産投資をすると、給与から源泉徴収された税金(所得税)が戻ってくるからお得です」と営業マンに聞き、不動産投資を始めて数年が経ちました。
確かに税金が還付されているので、節税になっているとは思うのですが…未だに給料から一定額を持ち出しており、税金の戻り分を加味しても持ち出しの方が多いような気がします。
営業マンの話は本当なのでしょうか?
【回答】
そのようなセールストークは良く聞きます。
しかし、実は得をしているわけではないのです。
税金計算上、不動産投資が赤字になっている間は、その分所得が減っているので、当然収めるべき納税額も減少します。つまり年末調整によって、給与所得分として一度収めた税額が、払いすぎとして戻ってきたに過ぎないのです。
損失が出ていることに気付きにくいのは、税金計算上「減価償却費」という支出を伴わない費用があるからです。
「減価償却費」とは、購入した不動産のうち、劣化が生じる「建物」にのみ計上することができる費用のことです。耐用年数や構造によって、毎年減価償却費が計算されます。
利益を計算する「損益計算」上、減価償却費は費用として計上されるため、その分利益額は下がります。しかし、現金の流れで考える「収支計算(キャッシュフロー)」上では、手元に減価償却費分の現金が残る仕組みになっているのです。そのため、借入の返済がその金額以内なら手元に残りますし、不足しても持ち出し額は少額になります。
つまり、「損益計算」と「収支計算(キャッシュフロー)」は、短期的には一致しないということです。この違いを理解しておきましょう。
多くの失敗事例は、物件の「高値掴み」に起因しています。
利回りが低下し、資金繰りも悪化、投資金額の回収にも時間を要するので、様々な点で余裕がなくなり、失敗する可能性が高まってしまうわけです。
投資のスタート段階でしか対応できないことですから、しっかり意識して対応しましょう。
まとめ
◎不動産投資で失敗しにくい状況にするには、「3つの不足」の解消をすることが大切です。
・「知識不足」の解消 → 段階を踏んで、しっかり学ぶ
・「情報不足」の解消 → 信頼のおける情報源を確保する
・「計画不足」の解消 → 計画を立てた上で、行動(投資)する
◎定期的に顧客サイドに立った専門家のサポートを得るようにしましょう。
◎物件を「高値掴み」してしまうと、失敗する確率が高まるということを覚えておきましょう。