佐藤 益弘の不動産投資コラム

シリーズ連載: 不動産投資を始める前に知っておきたいこと・始めた後に確認したいこと

LIFULL HOME'S 不動産投資コラム

新しい住宅政策から考える賃貸経営の流れ

いまさら聞けない、不動産投資のキホン

年末に入り、今年も1年の総括をする時期になりました。
今年も熊本地震や3つの台風による北海道・東北の水害、鳥取中部地震等の大きな災害もありましたが、不動産分野でも5月から空き家対策特別措置法(空き家対策法)が施行される等いろいろな制度や仕組みが変わった1年でした。

後から振り返ったとき、賃貸経営においてもエポックな年であったと思えるくらい沢山の事柄が変わった1年だったかもしれません。

特に今年は住宅関連の施策の中心で国が5年1度改定する「住生活基本計画」が変更された年でした。あまりよく知らない…という方もいらっしゃると思いますが、住宅系の賃貸経営をされているみなさんにとってはとても重要な政策で、知らないと損をすることになるでしょう。

先行きが見通しづらい世の中で、見通せる材料の1つです。今後、同様の話を継続的にお届けしたいと考えていますが、まず今回は新しい住宅政策とその背景についてお伝えしたいと思います。

1.住生活基本計画とは?

生活基本計画とは、2006年(平成18年)にできた「住生活基本法」に基づいて、「国民の住生活の安定の確保及び向上の促進に関する基本的な計画」として作られている計画です。行政(国や地方)が行う住宅政策の要となっている10ヶ年計画です。

2006年というと、サブプライム問題(2007年)やリーマンショック(2008年)の直前で、国内の景気に回復の兆しが見える中、高齢化が一段と進行し、日本の人口がピークを打ち、世帯構成もその中心が標準家庭と言われる3~4名の核家族から独身男性&女性に徐々に変化し出した頃です。つまり、良くも悪くも規制緩和による変化の兆しが見えた節目の時期でした。

それまでの住宅政策は1966年度(昭和41年)~2005年度(平成17年)まで8次にわたり策定された「住宅建設五箇年計画」という住宅の建設戸数を目標に位置づけた政策でした。つまり、量を中心に考えられた政策でしたが、前述の理由により“量より質”重視の政策に転換する必要性が生じ、「住生活基本法」が誕生しました。

住生活基本法とは、➀住生活の基盤である良質な住宅の供給、②良好な居住環境の形成、③居住のために住宅を購入するもの等の利益の擁護.増進、④居住の安定の確保という4つの基本理念の上に「生活基本計画(全国計画)」を定め、より具体的な形で各都道府県が地域の実情に即した「都道府県計画」を定める形になっています。

ちょうど1回目の生活基本計画(全国計画)が2006年度(平成18年)~2015年度(平成27年)までの計画でしたので、今年2016年(平成28年)3月に新たな3回目の「住生活基本計画」(計画期間2016~2025年度)が閣議決定されました。個別には「都道府県計画」に従うことになりますから、これから徐々に公開されるものと思われますが、そのベースである「全国計画」を確認しておくことは一歩先を読むことに繋がります。

2.背景…現状と課題、その対応ポイント

今回の全国計画では、少子高齢化・人口減少の急速な進展、世帯数の減少による空き家の増加といった住生活をめぐる現状の問題点を今後10年の課題に対応するための住宅政策の方向性が示されています。

課題について多岐にわたっていますが、➀人口や世帯数の動向に由来する課題(1~4)と②住宅ストックに関する課題(5・6)がメインになっています。
(1) 少子高齢化・人口減少の急速な進展。大都市圈における後期高齢者の急増
(2) 世帯数の減少により空き家がさらに増加
(3) 地域のコミュニティが希薄化しているなど居住環境の質が低下
(4) 少子高齢化と人口減少が、1)高齢化問題、2)空き家問題、3)地域コミュニティを支える力の低下といった住宅政策上の諸問題の根本的な要因
(5) リフォーム・既存住宅流通等の住宅ストック活用型市場への転換の遅れ
(6) マンションの老朽化・空き家の増加により、防災・治安・衛生面での課題が顕在化する恐れ

それに対して、対応ポイントは以下の3つです。

①若年・子育て世帯や高齢者が安心して暮らすことができる住生活の実現
②既存住宅の流通と空き家の利活用を促進し、住宅ストック活用型市場への転換を加速
③住生活を支え、強い経済を実現する担い手としての住生活産業の活性化

従来の政策では高齢者への対応を中心に据える計画が多かったのですが、此処も節目かもしれません。比重が若年・子育て世帯に徐々に移りつつあることが伺えます。

また、現在320万弱ある「実家(その他)の空き家」に関しては、この10年間(2023年)で500万程度に達すると予想されています。これを400万程度に抑える…つまり、100万戸を調整するため、住宅政策上初めて、計画的に除却~つまり、積極的に住宅を壊していくという政策目標を掲げました。事実、今年から住宅を除却・売却した際の所得税の特例が誕生しています。

都市の集約化を目的にしたコンパクトシティー化構想に基づいた国土計画(土地)も進展する中、 東京オリンピックのある2020年を境に賃貸経営も新しい形になっていく予感がします。

ここ数年は相続税の改訂やマイナス金利政策の導入により貸出先に苦慮している金融機関が不動産関連融資を増やしていることにより賃貸住宅が増加していると言われています。ただ、人口減少社会では従来のようにただ単に部屋を貸すだけでは賃貸経営は中々うまくいきません。
事業コンセプトの一層の明確化や具体的な入居者を意識した賃貸経営が求められて来るでしょう。

出典:国土交通省:住生活基本計画(全国計画)(2016年)

出典:国土交通省:住生活基本計画(全国計画)(2016年)


出典:国土交通省:住生活基本計画(全国計画)(2016年)

出典:国土交通省:住生活基本計画(全国計画)(2016年)

【このコラムの著者】

佐藤 益弘

東洋精糖(株)の不動産部門にてマンション開発・販売統括・管理支援などの主任を務める中、CFP®資格(FP)を取得。
オールアバウト・不動産投資(現土地活用)ガイドとして10年以上活動する中、延べ1000名以上の不動産投資家と触れ合い、成功事例&失敗事例を蓄積。

現在、お客さまサイドに立ったシンの独立系実務家FPとして、そのネットワーク確立のため、「マイアドバイザー®」を運営。
数少ない 金融商品販売を伴わない コンサルティング業務をメインとした~ お金の家庭教師≒教科書通りのFP として活動中。

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