佐藤 益弘の不動産投資コラム

シリーズ連載: 不動産投資を始める前に知っておきたいこと・始めた後に確認したいこと

LIFULL HOME'S 不動産投資コラム

いまさら聞けない 相続のルール・・・改正されました その1

いまさら聞けない、不動産投資のキホン

昨年来、「人生100年時代」という言葉は世間を飛び交っています。今後も「高齢化」の進展が益々進むと予想されていますし、同時に家族形態も夫婦+子供の核家族中心からお一人様=「単身化」中心の社会に変化しつつあります。

そんな中、時折アナウンスさせていただいていた通り、今年(2018年7月)、35年ぶりに相続関連のルール、民法改正が行われました。
2015年の相続税改正に続き、相続関連の大きなルール改正になります。

今回改正は、「配偶者が住み慣れた自宅に住み続けられる方策」など主に「配偶者」の残された生活に配慮したもの、争族を予防するための意思表示の簡素化が中心になっています。

改正は団塊の世代が70歳代に差し掛かり超高齢社会が急激に進展すること、また、単身世帯の増加により家族の在り方自体が変化、相続問題の複雑化していることが背景にあります。

相続税対策を念頭におき、賃貸経営をされている方は多いでしょう。
ですから、無視ができない改正になります。

そこで、今回は限られた紙面の中ですが、そのポイントについてお伝えしたいと思います。

1.はじめに

平成30年7月6日、民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律(平成30年法律第72号)が成立しました(同年7月13日公布)。

民法のうち相続法の分野については、昭和55年以来、実質的に大きな見直しはされてきませんでした。
ただ、その間にも社会の高齢化が更に進展し、相続開始時における配偶者の年齢も相対的に高齢化しているため、その保護の必要性が高まっていました。

今回の相続法の見直しは、このような社会経済情勢の変化に対応するものであり、残された配偶者の生活に配慮する等の観点から、配偶者の居住の権利を保護するための方策等が盛り込まれています。

このほかにも、遺言の利用を促進し、相続をめぐる紛争を防止する等の観点から、自筆証書遺言の方式を緩和するなど、多岐にわたる改正項目を盛り込まれています。

改正は,一部の規定を除き,2019年(平成31年)7月1日から施行されます。
(詳細は以下の「民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律の施行期日」の項目をご覧ください。)

2.改正のポイントは?

具体的に変更になるのは、以下の法務省の資料にまとめられています。

法務省「民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律等の概要について」より

法務省「民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律等の概要について」より


要約をすると以下の6つになります。

第1 配偶者の居住権を保護するための方策
→ 配偶者居住権が新設される

第2 遺産分割等に関する見直し
→ 結婚期間20年以上の夫婦では、住居の贈与&遺贈が特別受益の対象外になる
→ 遺産分割前に生活費を引き出せる

第3 遺言制度に関する見直し
→ 自筆証書遺言の形式が一部、簡素化される
→ 法務局で自筆証書遺言を保管できる
→ 自筆証書遺言の検認手続きが不要になる

第4 遺留分制度に関する見直し
→ 遺留分による請求を、原則、金銭による請求にする
→ 期間制限が付与される

第5 相続の効力等に関する見直し
→ 法定相続分を超える権利については、登記等の対抗要件が必要になる

第6 相続人以外の者の貢献を考慮するための方策
→ 被相続人の介護や看病で貢献した親族は金銭請求が可能になる

以上6つの改正になります。

とても難しく、多岐にわたっていますね(笑)。

では、理由も含め、詳細を見ていきましょう。

3.改正の理由

実は、法務省では、2015年(平成24年)4月から3年も掛けて民法(相続関係)の改正を審議していました。
この理由は、先ほどお伝えした通り、目前に迫っている「高齢化」と「単身化」の進展です。
ポイントが3点ほどあると思われます。

1点目は、団塊の世代が70歳代に差し掛かり、特に女性の単身高齢者を意識した「配偶者の生活保障の必要性」が高まっていること。

2点目は、「要介護高齢者の増加」により出来るだけ早い意思決定(決断)の重要性が高まる中、相続に関しては、中々ことが進んでいないということ。

最後の3点目は「高齢者の再婚の増加」など相続を取り巻く情勢が複雑化していること。

そのような変化する中で、どの様に相続のルールを変更していくか?
法務省の審議会の報告書を時系列で読んでいると試行錯誤したことが見受けられます。

平均寿命の推移と将来予測

内閣府「平成30年版高齢社会白書」より

内閣府「平成30年版高齢社会白書」より

4.具体的にどのように考えれば良いか?

「何のことを言っているか?」良くわからないという方もいらっしゃると思いますが、整理すると、以下のように解釈できます。

第1 配偶者の居住権を保護するための方策
→ 「配偶者の居住権」を保護することによって、自宅を高齢期の「住む場所」として確保する。

第2 遺産分割等に関する見直し
→「遺産分割に関する見直し」によって、伸び続ける老後期間の 「生活費」 を確保できるようにする。

第6 相続人以外の者の貢献を考慮するための方策
→「相続人以外の者の貢献を考慮するための方策」によって、療養看護に必要な担い手を確保する。
そうすることによって、社会保障費などの国の負担を軽減できることになります。

一方で、上記のデメリットとして、遺産分割の計算が複雑化することが懸念されます。
権利意識の強いアメリカのように裁判が頻発し、“争族”化の恐れがあるからです。

そこで、争いを避け、故人の意思を明確にする3.「遺言制度に関する見直し」=自筆証書遺言の方式の緩和がなされました。
こうすることによって、法定相続に縛られずに遺産分割が可能になるでしょう。

ただ、そうすることによって、遺留分の侵害が、より一層問題になります。
その対応として、4.「遺留分制度に関する見直し」がなされました。

また、故人に融資などをしている債権者(関係者)の保護のため5.「相続の効力等(権利及び義務の承継等)」に関する見直しもなされています。

内容が多岐にわたっていますから、詳細な点については、今後、折を見て、みなさんにお伝えしたいと思います。

5.まとめ ~改正に対処するためには・・・

既に2015年(平成27年)1月に、相続税・贈与税の改正が行われています。

このことによって、資産評価額の高い未活用&低活用の不動産を賃貸用不動産への資産移管=資産活用が進みました。

自分自身&ご家族のマスタープランであるライフプランを作成せず対応してしまったがために、バランス勘のない賃貸経営計画になっている物件も多く見受けます。

今回のような大きな制度=ルール改正は、私たちの人生に長期的に強い影響を受けることになります。
また、大きな時代の変化の中で、今後も同じように私たちに大きな影響を与える制度改正が行われるでしょう。

その際に右往左往することなく、冷静に判断し、行動するためにも、しっかり自分やご家族のマスタープラン=ライフプランを作成し、一歩先に判断&行動することが大切です。

【このコラムの著者】

佐藤 益弘

東洋精糖(株)の不動産部門にてマンション開発・販売統括・管理支援などの主任を務める中、CFP®資格(FP)を取得。
オールアバウト・不動産投資(現土地活用)ガイドとして10年以上活動する中、延べ1000名以上の不動産投資家と触れ合い、成功事例&失敗事例を蓄積。

現在、お客さまサイドに立ったシンの独立系実務家FPとして、そのネットワーク確立のため、「マイアドバイザー®」を運営。
数少ない 金融商品販売を伴わない コンサルティング業務をメインとした~ お金の家庭教師≒教科書通りのFP として活動中。

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