佐藤 益弘の不動産投資コラム

シリーズ連載: 不動産投資を始める前に知っておきたいこと・始めた後に確認したいこと

LIFULL HOME'S 不動産投資コラム

中古賃貸物件~オーナーチェンジ物件で忘れがちなリスク~ No.1

2019年10月の消費税増税や新型コロナウイルスによる景気の先行き不安を契機に景気後退局面入りが取りざたされています。そうなるとバブル崩壊やリーマンショック後にもあったように、無理な条件で投資をしていた物件が、賃借されたままの状態で割安で投げ売りされ、売買マーケットに出てくる可能性があります。

いわゆる「オーナーチェンジ物件」です。

そこで、複数の知人からもリクエストを頂いたので、今回は、オーナーチェンジ物件の購入時に気を付けたいこと、忘れがちなリスクについて、2回に分けて、話を進めていきたいと思います。

大前提として・・・
オーナーチェンジ物件≒中古賃貸物件のメリット&デメリット

オーナーチェンジ物件は中古物件の1分野ですから、中古物件のメリットデメリットを受けます。なお、数年前より中古物件はオフィシャルな言い回しではなくなり、マスコミや公官庁でも「既存物件」というようになりました。中古と言う用語が古い、悪いなどネガティブなイメージを持つからだと思われます。
ただ、わかりやすさの観点からこのコラムでは敢えて「中古」を使うこととします。

では、まず、中古物件のメリットについてお伝えしましょう。

・中古物件は、新築物件に比べて、理論上、新築物件の利益分~おおよそ粗利20%前後~が削ぎ落ちているので、投資額≒購入額自体が割安なこと
・周辺の賃料相場が安定していれば、結果的に期待できるリターン=利回りが高くなること
・新築物件では見えづらい管理状況などのリスク=不確定要素が少ないこと

以上の点から、投資対象として魅力を感じ、また、最初から家賃収入を得られる賃貸中の中古物件を勧められるケースも多い。また、好んで中古物件に投資される方が多いのも事実です。

ただ、リスクとリターンはトレードオフ、表裏一体の関係です。
あちらを立てればこちらは立たずの状況になります。

デメリットについては、例えば、

・新築物件と比べ、中古物件は確実に経年劣化していることから、物件を補修しなければいけない可能性性があること
・設備や意匠なども古く陳腐化しているため、周辺の物件と比較して見劣りしてしまう物件もあること
・建築当時は適法であった建築物が、その後、法令の改正などによって現行法に適合しなくなった既存不適格物件の場合、裏ワザ的な手法を使わないと建て替えや補修、ローン付けなどができないケースがあること

等があります。

オーナーチェンジ物件の場合は、数字上や見た目上有利に見えても、手続きや契約上の目に見えないリスクもあります。そのようなことを理解した上で、投資の是非を判断するようにしましょう。

オーナーチェンジ物件の購入時に気を付けたいこと

オーナーチェンジ物件は先ほどお伝えした通り、新築物件と違い、ハード面で難があるケースが多いので、チェックする必要があります。ただ、未入居の中古物件とも違うので、既存の契約などソフト面も確認する必要があります。

オーナーチェンジ物件で最も気を付けなければいけないことは、「現に入居している方(借家人)との信頼関係構築&維持」です。それは、オーナーチェンジ物件の売買は所有権だけでなく、賃借権も同時に譲渡される、引き継ぐことになるからです。

そもそも所有権と賃借権は別々の権利ですから、売買をすれば自動的に賃借権も移動するというわけではなく、借家人(賃借人)に賃借権という債権を引き継いだというためのルール(対抗要件)があります。

このルールは、民法第467条に記載されています。

民法 第467条(債権の譲渡の対抗要件)
1.債権の譲渡(現に発生していない債権の譲渡を含む。)は、譲渡人が債務者に通知をし、又は債務者が承諾をしなければ、債務者その他の第三者に対抗することができない。
2.前項の通知又は承諾は、確定日付のある証書によってしなければ、債務者以外の第三者に対抗することができない。

つまり、大家の権利の移動(=賃借権の譲渡)を借家人(=賃借人・債務者)に主張し、新しい大家が家賃の支払いなど請求するためには、
①譲渡人である「“前”の大家さんから借家人に通知してもらう」か、
②「借家人自身から承諾を得る(納得して貰う)」必要があります。

これは、借家人から見ると誰が大家かわからない=誰に家賃を支払ったら良いか?わからず、二重に家賃を支払うなど不都合がないように定められたルールなのですが、新しい大家さんからすると少々手間です。

実際、それでは新しい大家としては困るので、重要な3つの最高裁判例により、異なる対応がされます。

まず、特段の事情のない限り、新しい大家さんは“当然に”大家(賃貸人)の地位を承継します(最高裁判例 昭和39年8月28日)。
また、通常必要な上記の地位移転の通知については、不要とされ(最高裁判例 昭和33年9月18日)、所有権移転登記を受けていれば賃料も収取できます(最高裁判例 昭和49年3月19日)。

ただ、通常は、借家人からの承諾を得るよう動きます。そして、この手続きに関しては、売買契約の仲介に入っている宅建業者に依頼するケースが多いでしょう。そして、その後、この仲介業者さんに物件の管理を委託するのが多いでしょう。
ただ、大前提として、この仲介業者さんに債権譲渡をする権利はありません。

しっかりと管理委託をしている宅建業者が理解し対応できないと、借家人との間に感情的な禍根を残し、大きなトラブルに発展するケースもありますから、大家としても管理業者の選定に注意が必要です。

敢えて、信頼関係を壊し、賃貸借契約を解除させるような対応をする業者も以前はいましたが、現在はネット社会でそのような悪評はすぐに伝わってしまいますから、減っていると思います。

【このコラムの著者】

佐藤 益弘

CFP®認定者、日本FP協会 評議員
宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、住宅ローンアドバイザー(一財住宅金融普及協会)

東洋精糖(株)の不動産部門にてマンション開発・販売統括・管理支援などの主任を務める中、CFP®資格(FP)を取得。 オールアバウト・不動産投資(現土地活用)ガイドとして20年近く活動する中、延べ1000名以上の不動産投資家と触れ合い、成功事例&失敗事例を蓄積。

現在、お客さまサイドに立ったシンの独立系実務家FP~金融商品販売を伴わないコンサルティング業務をメインとした~教科書通りのFP=ライフプランFP® として、20年の長きにわたり活動。

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