佐藤 益弘の不動産投資コラム

シリーズ連載: 不動産投資を始める前に知っておきたいこと・始めた後に確認したいこと

LIFULL HOME'S 不動産投資コラム

中古賃貸物件~オーナーチェンジ物件で忘れがちなリスク~ No.2

前回、オーナーチェンジ物件のメリットとデメリット、そして購入時に気を付けたいことについて見ていきました。

今回は実際にあった大家にとっては悪夢的な失敗事例 と オーナーチェンジ時物件のリスクを踏まえ今後気を付けたいこと について、お伝えしたいと思います。

私が知っている失敗事例は・・・

数年前の事例ですが、オーナーチェンジ物件を購入後、半年以内に賃貸借契約の更新が迫っていたケースです。
家賃が少々相場より安かったので、更新時に家賃の値上げ交渉も検討している案件でした。

ただ、失敗したのが対応した、前回の条文や判例を理解していなかったため、話を混乱させたケースです。ことの発端は、家賃の増額の承諾とオーナーチェンジの承諾を1枚の書面で貰い、一括して処理しようと対応してしまったことです。大きなトラブルに発展してしまいました。

まず、時間の経過と共にことを説明すると・・・

管理会社が一括して承諾の依頼をした後

借家人から
・オーナーチェンジについては「前の大家さんから知らせて欲しい」という依頼
・「大家さんの引き継ぎと家賃の値上げは一括で承諾する必要があるのか?」という問いあわせ
を貰ったようです。

それに対してその管理会社が
「前の大家から知らせることは稀で、一括で処理することが通例」だと借家人に伝え、強引に事を進めようとした

ものですから、それ以降、擦った揉んだとなりました。

先ほどお伝えした通り、そもそも所有権と賃借権は別々の権利なので、案件も別です。つまり、別々に話を整理し進めていれば何の問題もなかったのですが、管理会社が手間を惜しんだのか?借家人を素人だと甘く見ていたのか?わかりませんが、適切な説明をしなかったことから大きなトラブルになりました。

結局、このケースでは、借家関係の手続きに関して適法に対処はされていたのですが、適切な説明ができず、精神的な禍根を残してしまいました。借家権の解除に信頼関係の欠如がありますが、このケースでは大家サイドの不手際ですから、仮にできたとしてもかなり腹を括らないといけない案件だと思います。

最終的に大家さんが管理会社を変更したのですが、こと既に遅きに逸しました。

本来、法的に不要であるオーナーチェンジの承諾は当然に取れましたが、肝心の家賃改定ができないまま更新時期が過ぎてしまい、更新書面も交わせて貰えない・・・大家にとっては最悪の結果になりました。

なぜ、最悪なのか?と言うと、借地借家法で借家権は「期間の定めのある」借家権と「期間の定めのない」借家権があり、更新ができないとそれ以後は法定更新となってしまい、以後の契約内容は今までのままなのですが、契約期間については更新のない「期間の定めのない」借家権になってしまうからです。

元々、借家権は借家人側に有利になっており、大家にとってタダでさえ不利な事柄が多いのですが、この「期間の定めのない」借家権は私が知る限り、更新がないなど圧倒的に大家さんにとって不利なものです。

スムーズに安心してオーナーチェンジするために気をつけたいこと

では、こういうトラブルに巻き込まれないためには、どうすれば良かったのでしょうか?

まず、念には念を入れてオーナーチェンジ物件の売買契約に「前の大家さんから賃借権の譲渡について、借家人に通知して貰う約束を取り付けるべき」でした。

その上で、管理会社に適切に顧客対応をして貰い、正々堂々家賃の値上げについても交渉して貰えば良かったのです。
また、オーナーチェンジ物件は、敷金も売買価格に含まれていることとなりますから、売買代金もその点を考慮して試算しましょう。

リーマンショック直後にあるオーナーチェンジ物件・一棟アパートの購入を検討されているお客さまから相談を受けたことがありました。

都内の一等地で、建物も問題ない格安な物件でした。ただ、いくらリーマンショック後の投げ売り物件だとしても少し変で窓口になっている仲介業者もちょっと怪しい・・・という相談でした。

確認して直ぐにわかったのは、変わった登記がされていることです。どのような登記か?と言うと、建物部分の登記(乙区)に敷金の登記がされていました。しかも、賃貸借契約が相場より2~3割高く、契約時期が全て1年以内の物件でした。

土地を借りている=借地であれば、登記が「自分が権利を持っているぞ!」という対抗要件なので、登記する理由は当然あります。
ただ、借家の場合は“引渡し”、つまり、そこに継続的に住んでいることだけで、対抗要件になるので、登記ができますが、手間や費用の観点から登記をしないことが普通です。

また、賃貸相場より明らかに有利=高い賃料で貸している=利回りが高いケースでした。その場合、購入して間を空けずに賃料減額要請を受けたり、退去されたりして、想定が狂う可能性もあります。

ですから、元々の賃貸借契約の内容、できれば借家人との関係なども吟味して、購入するようにしましょう。

退去時の敷金精算はトラブルになることも多く、最近は敷金のほとんどを返却するケースが多いはずです。2020年4月の民法改正により敷金も条文に含まれましたが、返却することが前提の発想になっています。

基本的に不動産の貸し借りを規定する借地借家法は民法の子分的な立場で、借り手にとって有利なルール、つまり、貸し手である大家にとっては不利なルールになっていますから、争いになってもなかなか大家にとって納得できる結果にはならないでしょう。

以上のことも意識し、オーナーチェンジ物件の購入を検討しましょう。

【このコラムの著者】

佐藤 益弘

CFP®認定者、日本FP協会 評議員
宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、住宅ローンアドバイザー(一財住宅金融普及協会)

東洋精糖(株)の不動産部門にてマンション開発・販売統括・管理支援などの主任を務める中、CFP®資格(FP)を取得。 オールアバウト・不動産投資(現土地活用)ガイドとして20年近く活動する中、延べ1000名以上の不動産投資家と触れ合い、成功事例&失敗事例を蓄積。

現在、お客さまサイドに立ったシンの独立系実務家FP~金融商品販売を伴わないコンサルティング業務をメインとした~教科書通りのFP=ライフプランFP® として、20年の長きにわたり活動。

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