佐藤 益弘の不動産投資コラム

シリーズ連載: 不動産投資を始める前に知っておきたいこと・始めた後に確認したいこと

LIFULL HOME'S 不動産投資コラム

新型コロナウイルス感染拡大から考える 大家がすべき対応 No.5 住生活総合調査からわかる 現状と未来の不動産投資1

オンラインを通じた講演やセミナーなどの情報発信をする場が増えてきました。
先日も、ある業者さんを通じて不動産投資・賃貸経営に関するオンライン講演をしたのですが、講演後に相談やご質問を多く受けしました。

みなさんから聴かれたのが、「先行きが見通せない」というキーワードです。
確かに、現在の新型コロナ禍のような昨今の非常事態では、そうでしょう。
ただ、20年近くこのお仕事をしていて、通常の経済状況下でもこのキーワードは良く聴き、相談やご質問もお受けします。

1つのヒントとして、定期的に出されている公的な基幹統計などの調査を参考にし、自分自身の状況と照らし合わせる=比較するという方法があります。

直近(2020年8月7日)にも、「平成30年住生活総合調査」という重要な統計が公表されました。
今回は、このデータに基づいたお話を数回に分けてしたいと思います。

住生活総合調査とは?

住生活総合調査とは、住宅及び居住環境に対する居住者の満足度や今後の住まい方の意向等を総合的に調査し、住生活基本法に基づく住生活の安定・向上に係る総合的な施策を推進する上で必要となる基礎資料を得ることを目的としています。

堅苦しい説明はともかく、5年に1回行われている調査で、住宅や世帯の実態を把握する基幹調査である「住宅・土地統計調査(総務省)」の翌年に公表されます。公表の翌年に変更される「住生活基本計画」の基礎資料として、「住宅・土地統計調査(総務省)」と共に事実上活用されているデータになります。

「住生活基本計画」は5年に1度見直される国の住宅政策の根幹ですから、このデータを押さえておくことは、住宅を投資対象にした不動産投資を行う上でも重要です。

今回の調査は、平成30 年12 月1日現在の状況をもって実施されています。
主な調査項目は、①住宅及び居住環境に対する評価、②今後の住まい方の意向、③住宅及び居住環境の個別要素に対する評価、④家族構成別に見た住宅及び居住環境の評価と住み替え・改善意向となっています。

この調査内容を見れば、当面、どのような視点で、住宅分野への投資を行うべきか?理解できると思います。

そこで、今回は、この4つの調査項目を踏まえて、賃貸住宅を基準にポイントをお伝えしたいと思います。

住宅・居住環境に対する評価は?

まず、住宅・居住環境に対して不満のある世帯の割合(不満率=「非常に不満」と「多少不満」の合計)を見てみると、堅調に低下しています。1983年(昭和58年)当時の不満率は38.4%なのに対して、2018年(平成30年)の不満率は21.5%となり、35年前と比較してほぼ半減しています。
住宅の質の向上が影響していると思われます。

【住宅・居住環境に対する総合評価】

次に、持ち家と借家、建て方別に分けて、住宅に対する不満率を見てみましょう。
住宅に対する不満率は、持ち家で約2割、借家で約3割と借家の方の不満が大きいことがわかります。特に、借家に関しては一戸建てが賃貸アパートやマンションなど共同住宅の不満率を上回っています。築古物件や賃貸用戸建てなど質的に見劣りしたり、立地など利便性など諸条件が相対的に劣ったりする物件が多いことが理由だと思われます。
ただ、改善の余地も大いにあるわけですから、チャンスであるとも言えます。

【持ち家・借家別、建て方別】

世帯構成別に住宅及び居住環境に対する総合的な評価(不満率)の経年変化を見ると、親と子から成る世帯や夫婦のみの世帯は減少傾向にあります。ただ、現在の世帯構成のトップで、今後も増加が予想される単身世帯については平成30年に23.2%と微増に転じています。様々な見方ができますが、利便性や投資家の利回りなど重視するあまり、居住面積が狭小の物件が増えてきていることも一因だと思われます。

【家族構成別の住宅及び居住環境の総合的な評価】

借家における住居費負担に対する評価を見ると、「ぜいたくはできないが、何とかやっていける」が50.5%と最も高く、次いで「ぜいたくを多少がまんしている」が22.4%、「家計にあまり影響がない」が16.2%、「生活必需品を切りつめるほど苦しい」が7.8%となっています。
新型コロナ禍で、さらに弱含みの内容になっているような気がします。

【借家の住居費負担に対する評価】

以上のように、住宅・居住環境に対する評価に大きな変化が見られません。
ただ、恒常的に借家に関しては3割程度のお客さま=入居者がなにかしらの不満を持っているという認識で、臨みましょう。

次に、今後の住まい方の意向に付いてみていきましょう。

今後の住まい方の意向は?

まず、最近5 年間に実施した住み替えがどのような居住形態で行われたのか?その割合を見てみましょう。
住み替えを実施した世帯の割合を、持ち家から持ち家、持ち家から借家、借家から持ち家、借家から借家の4 類型の居住形態の変化別で集計すると、ほぼ半数が借家から借家への住み替えであり、借家から持ち家への住み替えも含めると、74.8%が借家からの住み替えとなっています。

賃貸経営という観点から考えれば、常に、退去の可能性を意識する必要があります。人口減少下で、かつ、新型コロナ禍の状況では、築古や駅から遠方など利便性が劣るなどハード面でマイナスになってしまう物件であれば、借家人に有益な情報を提供するなどソフト面の改善を考えると良いでしょう。

【最近5 年間に実施した住み替えにおける居住形態の変化別の割合】

今後の住み替え先については、持ち家に住んでいる世帯の「持ち家」への住み替え意向は、手取収入の低下など経済的な影響か? 10年で概ね8割から7割に減少しています。借家に住んでいる世帯は、今回の調査で初めて「借家」への住み替え意向が「持ち家」への住み替えを上回りました。理由はもう少し精査する必要があると思いますが、ある意味でエポックメイキングな事柄です。
賃貸経営という観点からは、空き家にしないためにもご自身の物件のストロングポイント(魅力)を認識、維持し、上手にアピールできると良いでしょう。

【今後の居住形態(持ち家・借家)に関する意向】

家族構成別に住み替えニーズを見てみると、単身(64歳以下)、単身(家計主64歳以下)、親と子(長子17歳以下)の順でニーズが高いことがわかります。つまり、単身世帯、夫婦のみ世帯、教育の負荷が高い子育て世帯の順に約3割と住み替え意向が高いことがわかります。逆に、これらの家族層に適している借家が不足しているとも言えます。

【家族構成別 今後の住み替え意向】

以上のように、借家からの住み替えが3/4もあるということですから、いかに居住者に長期間、賃貸して貰えるか?が大切です。

【このコラムの著者】

佐藤 益弘

CFP®認定者、日本FP協会 評議員
宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、住宅ローンアドバイザー(一財住宅金融普及協会)

東洋精糖(株)の不動産部門にてマンション開発・販売統括・管理支援などの主任を務める中、CFP®資格(FP)を取得。 オールアバウト・不動産投資(現土地活用)ガイドとして20年近く活動する中、延べ1000名以上の不動産投資家と触れ合い、成功事例&失敗事例を蓄積。

現在、お客さまサイドに立ったシンの独立系実務家FP~金融商品販売を伴わないコンサルティング業務をメインとした~教科書通りのFP=ライフプランFP® として、20年の長きにわたり活動。

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