不動産投資では、物件を取得するのに融資を活用するため、事業規模を拡大していこうと思えば常に融資との戦いとなる。
また、これから初めて物件を取得するという投資家にとっても、融資の承認を得られるかどうかは大きなポイントといえるだろう。
いずれの場合でも、融資に関する知識は不可欠である。今回は、不動産投資における融資について、基礎知識や流れ、最近の動向についてお伝えしていく。
■不動産投資の融資について
まずは、不動産投資の融資について説明しよう。
・アパートローンの概要
不動産投資では、金融機関のアパートローンを利用して物件を購入するのが一般的だ。
アパートローンでは取得対象となる物件を担保に入れるため、通常では借りられないような金額を借りることもできる。
例えば、みずほ銀行のアパートローンの借入可能額は50万円以上5億円以内となっている。
もちろん、融資を受けるには審査が必要で、借りる人の勤め先や年収、自己資金、過去の返済状況、取得する物件の収益性などが審査対象となる。
・投資先の物件も評価対象になる
前述の通り、アパートローンは投資先の物件も審査の評価対象となる。
物件の収益性や資産価値が高ければ審査にプラスとなるし、一方でそれらが低ければ、借りる人の年収等が高くても審査の承認を得ることはできない。
・属性や年収、自己資金が評価対象になる
アパートローンでは、借りる人の属性(勤務先)や年収、自己資金が評価対象となる。
勤務先については、公務員や上場企業のほうが評価は高く、また地方銀行や信用金庫で審査を受けるのであれば、そこと取引のある地方で信用の高い企業も高評価となりやすい。
とはいえ、勤務先を変えたりや年収を簡単に上げることは難しいだろう。その点、自己資金を貯める対策であれば短期間でも効果があるのでおすすめだ。
・不動産投資では融資が全体のパフォーマンスに影響する
不動産投資では融資が全体のパフォーマンスに影響する。利用するローンの借入期間、金利、借入額で返済額が変わるからだ。
例えば、借入期間20年、金利2%、借入額1億円のローンの毎月返済額は約50.5万円。
一方、2%で借入期間を30年にした時の毎月返済額は約36.9万円、金利を1%で20年にした時の毎月返済額は約45.9万円、金利を2%で借入期間を20年で借入額を9,000万円にした時の毎月返済額は約45.5万円となる。
ローンを借りる時は、いかに借入期間を長く、金利を低く、借入額を少なくできるかを考える必要があるだろう。
■不動産投資の融資の流れ
不動産投資において、融資を受ける際は次の5つの流れとなる。それぞれを詳しく見ていこう。
1.物件調査
まずは購入を検討している物件について、空室状況や現況の利回り、返済額がいくらであれば毎月どのくらい現金が残るのかといったことを調査しよう。
2.融資打診
実際の審査は売買契約を締結してからになるが、この段階で取得を検討している物件で融資を受けられそうか金融機関に確認しておこう。
この段階で、金利はどのくらいで借りられそうかも確認しておくことをおすすめする。
3.売買契約
売買価格など条件が固まったら売買契約を締結する。
売買契約前には価格交渉できることがあるが、「売買価格がいくらであれば毎月○○万円の現金が手元に残る」といった視点で交渉を進めるとよいだろう。
4.本審査
売買契約締結後は本審査に入る。なお、売買契約締結後に審査が否決となった場合、売買契約時に支払った手付金を返却してもらうため、売買契約時に「ローン特約」を盛り込むことが大切だ。
審査期間は金融機関や物件によって異なる。1~2週間程度で出ることもあるが、金融機関側ですぐに結論が出ない場合には1ヶ月以上かかることもある。
5.決済
本審査の結果、無事承認を得られたらローン決済と同時に所有権移転登記を行う。
所有権移転後は、賃貸中の場合は家賃を受け取れるようになるとともに、物件の管理を行っていくことになる。
■融資引き締めの実態について
2018年頭に世間を騒がせたかぼちゃの馬車事件の影響もあり、不動産投資については融資引き締めの噂も聞かれるが、実際のところどうなのだろうか。
・かぼちゃの馬車事件
かぼちゃの馬車事件については1年ほど前に連日ニュースで取り上げられたため、特に不動産投資に興味のある方は記憶に残っているのではないだろうか。
スマートデイズ社の運営する単身の女性向けシェアハウス「かぼちゃの馬車」に対し、スルガ銀行が融資の審査書類偽造や改ざんに関与していたなどとして、金融庁がスルガ銀行に業務停止命令を発令するまでの事態となった事件だ。
・融資は実際厳しくなっている
2019年2月13日付の日経新聞の記事でも報じられているが、不動産投資への融資審査については実際厳しくなってきている。
かぼちゃの馬車事件がすべてとは言わないが、こうした不正融資による影響が出ていると考えられている。
今後、不動産投資に取り組もうと思っている方は、金融機関に対する、より効果的な融資対策が求められるだろう。
・融資が厳しい時こそ物件を取得する時
とはいえ、これから物件を取得しようと思っている方にとっては、融資が厳しいことは悪いことばかりではない。
融資の承認が出やすい時は、多くの需要が生まれやすく、そのために売主は強気になり、価格が高くなることが考えられる。
一方、融資の承認が出にくい時は、売主が売りたいと思ってもなかなか買主を見つけられなくなるため、売主は価格を下げることが考えられる。
これから物件を取得する方にとっては、プラスになりやすいといえるのだ。
■まとめ
不動産投資ではほとんどの場合、融資を受けて物件を取得する。多くの不動産投資家が、融資が通らないことを理由に希望の物件取得を諦めた経験をもっているだろう。
かぼちゃの馬車事件などが起こり、実際に融資引き締めが行われていることが日経新聞等でも報じられている。いざ、よい物件が目の前にきたときにすぐにでも動けるよう、融資について内容を理解し、準備を進めておくことをおすすめしたい。