経常支出と臨時支出 |
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不動産投資における支出は、経常支出と臨時支出に大きく分けられます。経常支出とは、不動産運用時(保有時)に必ず発生する費用のことで、臨時支出とは、通常発生しませんが、修繕費用などのように数年に1度発生する可能性があるものです。
経常支出には大きく分けて以下の4つがあります。いわば以下の費用は不動産投資とは切っても切れないものであり、投資用不動産購入時にはある程度、予測、シミュレーションが可能です。しかし、このような経常的に発生する費用でも、常に一定ではなく変動する可能性があります。この変動の要素をおさえておかないと後から投資計画にくるいが生じることもありますので注意が必要です。
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(1) 管理コスト(物件維持管理費用、賃料集金管理、水道光熱費など)
(2) 借入金の返済
(3) 保有税(固定資産税・都市計画税)
(4) 所得税(所得税・住民税)
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経常支出とはいえ、それぞれのサービス内容や金利の変動などによって、その費用は変わってくることになります。つぎの2.~4.では、それぞれの変動要素をくわしく取り上げていきます。
所得税の変動要素に関しては、さまざまなパターンが考えられますので、次回の「支出に関するリスクとその対応策2」でくわしく解説します。 |

管理コストの変動要素
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サービスを向上させることによってコストも増加することになります。管理コストとは水道光熱費などの実費のほかに、管理会社への手数料があります。管理は主に入居者管理と建物管理に分かれますが、いずれの管理も管理手数料は管理内容によって変動します。入居者管理の場合、賃料の入出金の管理と賃料の集金代行のみを不動産管理会社に任せた場合でも、当然、コストがかかります。そして、そこに家賃保証、滞納保証サービスを付加した場合はオーナーの手間が省け、リスクが小さくなるぶん、コストがアップします。また、建物管理についても管理を充実させるほどコストはアップします。その半面、共用部分の清掃を2週間に1回から週に1回にしたり、管理人を日勤から常駐にしたり、24時間防犯、警備サービスを導入するなど、管理面で質を向上させることは資産価値向上につながります。
ただし、管理の質の向上がストレートに賃料に反映できるわけではありませんので、入居者管理、建物管理ともに、どのような管理体制を設けるかは、収支面からも検討しなければいけません。 |
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借入金の変動要素 |
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不動産投資において借入金を利用する場合、借入金の金利には変動金利と固定金利の2つの種類があります。固定金利の場合は返済が完了するまで、金利は一定ですので、安定した返済計画を立てることが可能となります。しかし、変動金利で借り入れをした場合には市場の金利に連動して金利が上下しますので、注意が必要です。特に現在は低金利が続いていますので、今後は金利が下がるよりむしろ上がるものと覚悟しておいたほうが安全でしょう。金利が上昇すると、月々の返済額が増加し、収支を圧迫するとともに、返済総額も大幅に増加する可能性があります。
不動産投資を安定運用させることを考えると、スタート時の金利が安い変動金利に比べ、少々金利が高くても固定金利を選択するのが望ましいでしょう。一般的に不動産投資は長期安定型の投資形態です。金利が上昇しても、それに連動して賃料もあがるとは限りませんので、借入金を利用する場合は長期的な視点に立って計画をたてるべきです。
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金 利 |
2% |
3% |
4% |
返済額/月 |
10年返済 |
9,201 |
9,656 |
10,125 |
20年返済 |
5,059 |
5,546 |
6,060 |
返済総額 |
10年返済 |
1,104,120 |
1,158,720 |
1,215,000 |
20年返済 |
1,214,160 |
1,331,040 |
1,454,400 |
*100万円を元利均等返済で借り入れした場合:単位(円) |
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保有税(固定資産税・都市計画税)の変動要素 |
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不動産は運用していなくても保有しているだけで、土地、建物ともに固定資産税・都市計画税が毎年課せられます。固定資産税・都市計画税は以下の算式によって課税されますが、これは固定資産税評価額が変動するため、毎年一定額ではありません。
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*税率は不動産の所在する市町村によって異なる場合があります。
*負担調整措置により上記基準から一定額減額されている場合があります。
*都市計画税とは市街化区域内にある土地建物に対して課税されるものです。 |
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固定資産税、都市計画税はともに「固定資産税評価額」をもとに算出されています。この税金を算出する基となる価格を「課税標準」とよびますが、この課税標準である固定資産税評価額は3年に1度見直しされます。すなわち3年に1度の見直しによって、固定資産税評価額が高くなったり安くなったりします。当然、これに連動して、固定資産税、都市計画税も高くなったり安くなったりします。 通常、土地の固定資産税評価額は地価と連動しますので、地価上昇時には固定資産税評価額も上昇し、地価下落時には固定資産税評価額は下がります。つまり地価の上昇、下落によって税金も変わるのです。固定資産税評価額は3年に1度の見直しですので、タイムリーに地価を反映しているわけではありません。評価替え以降3年間は、地価が上昇しようと、下落しようと原則、一定額となります。ちなみに次回の評価見直しは平成18年となっています。 |
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土地に関する固定資産税・都市計画税は、その土地の上に建っている建物の利用方法によって大きく変わります。その土地の上に建っている建物が、事務所、店舗などの事業用建物の場合、その土地の固定資産税は前述のとおり、原則「固定資産税評価額×1.4%」(都市計画税は「固定資産税評価額×0.3%」)ですが、住宅やアパート、マンションなどの共同住宅の場合はその土地の固定資産税は6分の1(200m2まで)に軽減されるのです(都市計画税は3分の1(200m2まで))。つまり、事業用建物の敷地に対する固定資産税は居住用建物の敷地に対する固定資産税に比べて6倍(都市計画税は3倍)なのです。したがって、リニューアルなどによる建物の用途変更や、賃借人からの申し出による用途変更は固定資産税負担も十分に加味してから行う必要があります。
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事業用建物をリニューアルして居住用に変更した場合は固定資産税が6分の1に軽減されますが、逆に居住用建物を店舗や事務所に変更した場合や建物を取り壊して、更地や駐車場にした場合などは一気に固定資産税が6倍に跳ね上がりますので十分な注意が必要です(土地200m2の部分まで)。 |
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・ 平成18年3月31日までに新築された住宅であること
・ 1戸あたりの面積が50m2以上280m2以下であること
・ 貸家住宅の場合は同40m2以上280m2以下であること
・ 地上階数3以上の耐火建築物については5年間減額される
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建物にも当然、固定資産税は課せられますが、居住用の建物の場合、一定の要件を満たすことによって、新築時から3年(最大5年)間は固定資産税が2分の1に減額されることになっています。したがって新築の投資用アパート・マンションを購入した場合は、3年後または5年後に建物の固定資産税が2倍になるということをある程度計算に入れておく必要があります。 また、中古の投資用アパート・マンションを購入する場合も同様、仮にその建物が固定資産税の軽減措置を受けていた場合には、3年目または5年目以降に建物固定資産税額が倍になりますので、確認が必要となります。 |

このように、経常支出には、管理コスト、借入金の返済、保有税、所得税の4種類あります。今回は、管理コスト、借入金の返済、保有税についてそれぞれの変動要因を解説しました。サービスの内容や返済方法、そのほか建物の用途などによってかかる費用が変わってきますので、しっかりと把握して安定運用に活用してください。