新型コロナウイルス禍のなかで、あまり大きく報道されませんでしたが、6月12日に「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律」(賃貸住宅管理適正化法)が成立しました。
法律の目玉は、賃貸住宅管理業の登録制度の創設と、サブリース業者に対する規制強化の2つです。
かぼちゃの馬車やレオパレスの問題ですっかり悪者のイメージがついてしまったサブリースですが、本来のサブリースの姿が歪曲化されてしまった感もあります。
今回は、サブリース規制強化の内容を中心に解説するとともに、サブリースのメリットについて再考します。

賃貸住宅管理適正化法成立の背景

2018年の賃貸住宅の戸数は、約1,906万戸と住宅総数5,361万戸の36%を占めており、日本の住宅のうち3分の1以上が賃貸住宅ということになります(国土交通省「住宅・土地統計調査平成30年」)。

また、不動産所得を申告納税した人の数は226万人にも達しています。多くの賃貸オーナーも高齢化や会社員などとの兼業化が進み、昔からの相対(あいたい)による賃貸はほとんど姿を消し、現在の賃貸経営では、管理会社に管理を任せたり、サブリースを利用したりする方法が主流になりました。それにともないお金や管理方法をめぐりさまざまなトラブルも発生しています。
また、サブリース契約については、借上げ賃料、借上げ期間などの契約条件の「誤認」を原因としてトラブルや裁判が増加し社会問題になっています。
そこで、管理会社の適正な管理業務やサブリース業者とのトラブル防止を図るためにこの法律が成立しました。

サブリース業者への規制の内容

賃貸住宅管理適正化法においては、サブリース業者と賃貸オーナーとの間の賃貸借契約の適正化を図るために、以下の措置を定めています。

(1)全てのサブリース業者に対し、勧誘における、故意に事実を告げず、又は不実を告げる不当な行為の禁止
今までトラブルが多かった、家賃が一定期間にわたって下落しない、サブリースは永久に続くなど、誤解させるようなセールストークはできなくなります。

(2)サブリース業者と所有者との間の賃貸借契約締結前の重要事項説明
賃貸借契約前にサブリースの説明を徹底することで、甘いセールストークを規制し誤認を防ぐことにつながります。

(3)サブリース業者と組んでサブリースによる賃貸住宅経営の勧誘を行う者についても、勧誘の適正化のための規制の対象とする
アパート建築会社にとって「勧誘者」の存在は、計画を後押しする強力な武器になります。筆者の在職中の話ですが、土地活用の顧客から、某大手銀行の担当者がレオパレスの営業を連れて来たという話をたびたび耳にしていました。この賃貸住宅管理適正法の施行により、紹介者にもトラブルの責任が及ぶことになるため、自己の利益だけで信用の低いサブリース会社を紹介することも減るでしょう。

あまり知られていないサブリースのメリット!

すっかり評判を落としてしまったサブリースですが、実はサブリースにはあまり知られていないメリットがあります。

実は、サブリースのメリットは相続税対策に発揮されます。
相続税を下げる方法には、大きく分けて「基礎控除を増やす」「財産を減らす」「財産の評価を下げる」という3つの方法があります。
そのなかで、「財産の評価を下げる」ためにサブリースはとても有効な手法になります。

アパートが建っている土地は「貸家建付地」と言い、「自用地(自宅や駐車場など)」と比べると相続税の評価額が低くなります。
貸家建付地の評価額は以下の計算式で算出します。

貸家建付地の評価額=自用地の相続税評価額×(1-借地権割合×借家権割合※×賃貸割合)

(※借家権割合は日本全国どこでも30%=0.3)

たとえば、自用地の相続税評価額が1億円、借地権割合が70%の土地に建てた10戸のアパートが満室だった場合の貸家建付地の評価額は
1億円×(1-0.7×0.3×10戸/10戸)=1億円×(1-0.7×0.3×1)=7,900万円
となり、自用地に比べると、評価額を2,100万円も下げることができます。

この計算式では、賃貸割合がポイントになります。
例のように、10戸のアパートが満室の場合は、賃貸割合が1になりますが、10室のうち3室が空室だった場合の賃貸割合は0.7、全て空室だった場合は0になります。
計算式にあてはめていただくと分かりますが、入居率が下がるほど、評価が下がらなくなり、入居率が0の場合は貸家建付地の評価額は自用地の評価と全く同じになってしまいます。
サブリースであれば、入居率はつねに100%になるので、相続税評価額の引き下げにおいては最大限のメリットを受けることができます。

また、一部の賃貸オーナーが子どもにアパートを生前贈与するケースがあります。その場合もサブリースは有効です。
貸家建付地の評価は、生前贈与によりアパートの所有者が親から子へ変わっても、同様に受けられます。
ただし、贈与後に入居者が入れ替わってしまうと、その部屋分の貸家建付地の評価は受けられなくなり、自用地評価になってしまいます。
その点、サブリースを利用していれば、入居者の入れ替わりがあったとしても、賃貸オーナーにとっての入居者はサブリース会社のままで変わらないため、引き続き貸家建付地の評価のままとすることができます。

このようにサブリースには、一般的に言われている安心感以外にもメリットがあるのです。

賃貸オーナーのサブリースとの付き合い方

ふつうに考えれば当たり前のことですが、サブリースでも管理委託でも、入居者は同じです。
入居者が賃貸住宅を探すときに、サブリースだから、賃貸だからという選択はしません。たまたま気に入って選んだアパートがサブリースだった、〇△不動産の管理だった、というだけです。
裏を返せば、サブリースのアパートの入居者だから10年間同じ家賃で住んでくれる、あるいは入居者が入れ替わっても次の入居者の家賃が前と同じということは当然ありません。
反対に、世間のアパート家賃相場が変わらないのに、サブリースのアパートだけ家賃が下がるということもありません。
法律が施行されると、サブリース会社の違法なセールストークは少なくなると思われますが、その前に賃貸オーナーは、サブリースでも管理委託でも、家賃の下落率は同じ、修繕積立も同じということを認識し、きちんとした経営計画を立てて判断することが大切です。
サブリースの本質を理解し、上手に利用してメリットを享受するようにしましょう。